村上孝蔵さん 男性 50歳
私のケース。
中高一貫教育で有名(?)な地方の進学校に通学しておりました。
中3で初恋。片思いでした。お相手は中1の女子で内科クリニックの一人娘。マドンナ的存在。
一方の私は、地味な存在ではありましたが、小人数の手下を従えるガキ大将。一晩徹夜して、決死の覚悟でラブレターを書きましたが、返事はなし。ただ、学校当局には通報されなかったようで、停学等の処分はありませんでした。
やがて高校に進学し、私は受験モードに入り、学業中心の生活を送るようになりました。当然、彼女も同じ高校に進学してきました。たまに廊下で出会ったりしたときは、彼女は赤くなってうつむいていました。ラブレター事件は二人だけの秘密のような気がしてうれしかったし、可愛かったです。
私の成績は中学校のときと比べれば信じられないくらい上向いていき、校内模試では常に上位にランクされるようになりました。
校内に結果が掲示されますので、彼女も私の名前を見ていたと思います。
私は家業を継ぐのをやめ、医師になることにしました。1年浪人しましたが、地方の名門国立大学医学部に合格することができました。医師を目指した動機の大半は彼女の存在でした。
大学に入学してまもなく、私は再び彼女(高3)に手紙を書きました。今度は、すぐに良い返事が来ました。夏休みには何度かデートをし、秋以降は彼女の受験勉強を手紙で励ましました。
学業優秀であった彼女は、現役で東京の一流大学に合格しました。遠距離恋愛でしたが、その後も交際は続いていました。
ちょっとした行き違いがあり、私の勝手な思い違いで交際が中断し、2年間連絡を取らないでいるあいだに彼女は地元の医師とお見合いし、大学卒業と同時に結婚をしてしまいました。
婚約が決まったあと、私は知らずに彼女と一度だけデートをしました。クルマで山に登り、夕陽に映えるふるさとの城下町を二人で眺めたのが最後の思い出です。
1週間後、私は告白(プロポーズ)の意を決して彼女を呼び出そうと電話を入れました。
電話口に出た彼女の言葉は・・・
「半年前にお見合いをしました。今日は結納の日で、相手の方がご両親と一緒にいらっしゃっています。このことは先週会ったときに言うべきでしたが言えませんでした。ごめんなさい・・・」
あとは言葉になりませんでした。
彼女は3人の子宝に恵まれ、現在、病院長夫人です。
私の初恋もやはり甘酸っぱい、苦い思い出ですが、私の人生の中では大切な思い出です。