かすみ草さん 女性 48歳
「うつ」…ストレス社会の現代の抱える重いテーマだと云えますでしょうか。この様に、心に重い石を抱えている人が、何と多い事でしょう。
実際、私の周りにもとても多く、それを相談されたり、貴方の様に、間接的に被害にあったり、その上で、このテーマは、私にも理解の範疇を超える事がしばしばでした。
少し例を挙げてみましょう。
例1:長い間、愛する人の介護を続けていた女性。その間は献身的に尽くしてきたが、その方が天寿を全うした以降、安堵と共に自由な日々が訪れる筈だった…。が、彼女は、家に近づくにつれ、気持が悪くなって行く。それどころか、その部屋に入ることすらできずにいた。…やがて、彼女は「うつ」と診断される。
例2:もう一人の女性。この方も、病気だったご主人を看取り、自由を得た途端、身体の異変に気づく。あれ程、好きだった、料理ができない。ご主人が好きで作ってあげていた卵焼き…その作り方がどうしても思い出せずにいた。それどころか、台所に入る事すら、できない。入ろうとすると、気分が悪く、吐き気がする。どうしても、「料理を作る」というイメージが湧かずに台所に背を向け、途方に暮れていた…。
――想像がつきますでしょうか。
女性ならば、結婚したら、愛する方のお料理を作りたいと思うもの。また、家族ができたら、台所は一日の多くを過ごす処ですね。
ですが、そこへ入る事すらできないのです。お料理を作るどころか、「何かを食べよう」と思う事すらできなくなってしまうのです。
…これが「うつ」というものなのです。
貴方が、違和感を感じるのはよく解ります。
ある時私は、相談を受けたうつの方に、お料理を代わりに作ってあげた事があります。その人は、その時とても喜んでいました。ですが、私が帰った後、「貴方とは会いたくない。貴女の事を考えるだけで気持が悪くなる!」と酷い言葉を言ってきたのです。あれ程喜んでいたのに、豹変して…。
その後、余り料理が得意じゃない女の子がお料理を作ると、すんなり受け入れたのでした。
…貴方はまだメール段階。「言葉に傷ついた」などと理解不能な事を言われましたね。貴方に傷つけるつもりもなかった筈なのに。
ですが、貴方は懸命に気を遣い、段々と疲れてきている…それが違和感になって、割り切れない思いを感じ始めていますね。
ですが、これは序の口なのです。
貴方はまだ会ってない。なのに、ここまで苦労をしている。ですが、会って、交際に進んだら、もっと色々な事が起こってきます。
もし、愛する人がうつになったのなら、何とか力になったり、支えになったりする、「エネルギー」が出せるかもしれません。
ですが、まだ会ってもいない人へ、もう既に、違和感を感じ始めている貴方…これは、貴方が悪いのではありません。この病気の原因や症状が理解不能な分、テーマが重すぎるのです。人は自分の事でも精一杯。なのに、他の人の心の深淵まで垣間見、理解するには難しすぎる難題なのです。
「うつ」の方へは、励ます事も、「頑張って」という事も禁忌です。
まして、お料理すら作ってもらえない…男性である貴方には、辛すぎる現状でしょうか。
…ご免なさいね。
いつもは、お悩みを建設的に捉えようとするのですが、今回のご相談は、私にも、その言葉が見つかりません。
せめて、そのお相手に、これ以上、若い貴方が傷つけられる事のない様、祈るばかりです。
1つだけ、思っていて下さい。
貴方は悪くありません。「うつ」を理解するのは難しすぎるのです。貴方が今までやった、相手への気遣い…それを褒めてあげましょう。「自分はよくやったのだ」と。
心が安らぐ様に、祈っていますね。