白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

サイエンスカフェは最終回。今回は日本医科大学大学院教授の佐久間康夫先生をお招きしました。脳と性ホルモンの専門家である佐久間先生に、男脳と女脳の違いや恋愛と脳との関係、性ホルモンの役割などについて、やさしく解説していただきました。

第2回 男の脳、女の脳はいつ作られる?

佐久間先生 もう一つは「性的指向」の障害で、女が好きか男が好きかということ。ホモセクシュアルの男性は、自分が男だということについては疑いを持っていない人が多いですね。でも女は好きになれず、男性をセックスの対象としてみる。

白河さん 人間て、つくづく本当に複雑な動物ですね。

佐久間先生 月並みな結論ですけど、人間の脳はわからないんですね。50年前だったら、身体には手をつけないで、脳のある部分に局所麻酔をしたり電気刺激をしてみたりして、自分はやっぱり男なんだ、女なんだ、と変えることができたかもしれません。でも今は道徳的に、脳にメスを入れるということはできないだろうな。

白河さん だから外見だけを変えるんですね。「自分は男」だと思っている女性には性転換の手術をしたりとか。

佐久間先生 でも、そこまでやっても自分の遺伝子の子どもは作れない。男性の場合も精巣を取ってとってしまうわけだから、もう元には戻せない。本当にそれが本人の希望なのか。手術した後で後悔するという人がかならず出てくるんですよね。

白河さん 先生のお話を聞いて、男だ、女だというのは、意外に後から決まるんだなと。男の魂、女の魂がボンと来るのではなくて、妊娠してしばらくして、そこでたまたま決まる、意外にあやふやなものなんだなと思いました。そう考えると、男と女が出会って対になるのは奇跡のようなことですね。

佐久間先生 うん。好きあってカップルになって子どもを作るなんて、すごい確率ですよ。女性は母親のお腹の中にいた頃に作られた500万個の卵細胞のうち、たった1つしか使わない。人間は1回の射精で1億5,000くらいの精子が放出されるけど、その中の1つの精子しか卵子に到達できない。その二つの組合せで子どもができるんだから、本当にこれは偶然です。

白河さん 少女マンガ「失恋ショコラティエ」の中に「出会わない人とは恋愛できない」というフレーズがありました。まだ見ぬ出会いを追い求めるだけじゃなくて、すでに出会った人を大切にしないと、永遠に恋愛はできない。生物学的にいって、ものすごい確率の中で出会った人のことは、ぜひ大切にしてほしいですね。



「第3回 恋愛をすると、脳の中では?」へつづく

今週の気になる「お言葉」
遺伝子が決めているのは、精巣ができるか、卵巣ができるかということだけ。脳の性別は性ホルモンの作用の結果で、遺伝子の直接作用ではありません。お母さんのお腹の中にいる間に、自分の精巣が作ったホルモンが脳を雄型化するんです。

薬指の長さは、お母さんのお腹の中にいたときのテストステロンの量で決まるといわれています。胎児期に、より高いテストステロンを浴びると、薬指の方が長くなる。これは男性が大人になってからアグレッシブになるのと、ある程度関係しているといわれます。

好きあってカップルになって子どもを作るなんて、すごい確率ですよ。女性は母親のお腹の中にいた頃に作られた500万個の卵細胞のうち、たった一つしか使わない。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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佐久間康夫
日本医科大学大学院 医学研究科システム
生理学分野 教授

1975年、横浜市立大学大学院医学研究科生理系修了(医学博士)。群馬大学助教授、ロックフェラー大学准教授、新潟大学助教授、弘前大学教授を経て、93年より日本医科大学教授、医学部生理学(システム生理学)講座の主任を務める。専門は生殖生理学、神経内分泌学、行動神経科学。エストロゲンをはじめ性ホルモンと脳、性行動との関連性、脳の発達と性分化などについて研究を行っている。
http://www.nms.ac.jp/nms/seiri1/