白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

サイエンスカフェは最終回。今回は日本医科大学大学院教授の佐久間康夫先生をお招きしました。脳と性ホルモンの専門家である佐久間先生に、男脳と女脳の違いや恋愛と脳との関係、性ホルモンの役割などについて、やさしく解説していただきました。

第2回 男の脳、女の脳はいつ作られる?

白河さん 外見の話ですが、薬指の長さが人差し指より長いと男性的ともいわれますよね。これで草食男子を見分けられるという話もありますが(笑)。

佐久間先生 薬指の長さは、お母さんのお腹の中にいたときのテストステロンの量で決まるといわれています。胎児期に、より高いテストステロンを浴びると、薬指の方が長くなる。これは男性が大人になってからアグレッシブになるのと、ある程度関係しているといわれます。

白河さん 男脳、女脳を作る性ホルモンの影響は、出生後もずっと続くのですか?

佐久間先生 人間の場合、性ホルモンの分泌はお母さんのお腹の中にある間に一度、ピークになります。実はよくわかっていないのですが、男の子に限って、生後1カ月くらいの時、男性ホルモンが一過性に上がってぱっと消える。その山は女の子にはありません。その後は、男女ともに思春期になるまで、性ホルモンは血中から消えてしまうんですよ。

白河さん 思春期になると、急に男性らしい体つき、女性らしい体つきに変わりますよね。

佐久間先生 思春期になって性ホルモンがぐっと増えると、その作用で男性型の行動、女性型の行動が起こり、同時に卵子が成熟したり精子が作られたりするようになります。

白河さん 思春期以降の性行動や生殖機能も、男脳、女脳がコントロールしているのですか?

佐久間先生 いえ、こちらは血中の性ホルモンが影響しています。母親の胎内にいる間のホルモン作用で、まず男性型または女性型のハードウエア=神経回路が作られます。そして思春期以降には、その回路を動かすのに不可欠な性ホルモンが出る。だから去勢してしまえば、男性型の脳を持っていても、男性の行動は出てこないし、女性に対する恋愛感情も起こらない。また、あまりにも低栄養で男性ホルモンや女性ホルモンの分泌が減っていると、男性型の回路、女性型の回路を持っていても、回路が決まらないんです。

白河さん 人間の場合は「お前は男の子なんだから」「女の子なんだから」と、社会的な圧力もかかりますよね。

佐久間先生 ホルモンの作用プラス社会的な影響で、男型の脳、女型の脳になるといえるでしょう。だけど一番大事なのは、生物学的な過程です。アメリカの例ですが、生後間もなく割礼を受けて失敗した男の子が、女の子として育てられたものの、思春期になって違和感を感じて親を問いただし、男に戻ったという例があります。「脳の性差は社会的に作られる」といわれますが、大元にある生物学的なホルモンの作用でできた脳は変え難い、というのが一般的な理解です。

白河さん 性同一性障害で悩む人もいます。例えば、性別は男なんだけど、脳は自分を女だと認識していて、だからずっと違和感を感じていて、最終的には外見も女性らしく、戸籍も女性に変えてしまったり。

佐久間先生 性同一性障害については、ちょっと区別して考えないといけない点があります。一つは「性自認」の障害で、自分が男と思っているか、女と思っているか、ということ。外科手術やホルモン療法によって外見を変えることで、自分の性別と性自認の違和感を解消することを望む方もいます。

白河さん 女装したりするタイプですね。





写真

白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



写真

佐久間康夫
日本医科大学大学院 医学研究科システム
生理学分野 教授

1975年、横浜市立大学大学院医学研究科生理系修了(医学博士)。群馬大学助教授、ロックフェラー大学准教授、新潟大学助教授、弘前大学教授を経て、93年より日本医科大学教授、医学部生理学(システム生理学)講座の主任を務める。専門は生殖生理学、神経内分泌学、行動神経科学。エストロゲンをはじめ性ホルモンと脳、性行動との関連性、脳の発達と性分化などについて研究を行っている。
http://www.nms.ac.jp/nms/seiri1/