白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回は、動物の行動学が専門の麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室教授、菊水健史さんをお招きしました。動物と人間、求愛行動の似ているところは何か、違うところは何かというお話から、恋愛上手になるためのヒントを探ります。

第4回 さまざまな婚姻の形、そしてもっと恋歌を歌うために

菊水先生 相手の気持ちになるというのは、すべての人間関係の基本になると思います。恋愛でも「相手が喜ぶからこれをしてみよう」と考えられると、自分本位のやり方ではなくなってくると思います。

白河さん そこに至るまでが、なかなか難しい。お見合いパーティーで、1分半の自己紹介で、ぐるぐる回っていくのは、あまりよくないかもしれませんね。人間は3分くらい話をしないと、もう1回会いたいか決められないという研究があると聞きました。

菊水先生 1分半では、本当の意味での共感は難しいですねえ。

白河さん 共感を得られる社会を作ることが、恋愛にも必要、子育てにも重要。恋愛したいと思ってる人は、たまには情報断食をするとか、犬のように相手の気持ちに寄り添ってみるとか。

菊水先生 生身の体で勝負、みたいな。

白河さん 人間だけですよね、生身じゃないもので勝負しているのは。動物もモノを少しは使いますが、基本は生身ですからね。動物が恋歌を歌ったり、きれいな羽を広げたりしているのを見てすごく心が動くのは、生身で精一杯勝負している姿に打たれるのかな。

菊水先生 インターネットの婚活サイトに掲載されている男性の情報を見るより、その人が例えば漁師さんだったとして、はえ縄を一生懸命に引いているところを生で見たほうが心が動くと思うんです。

白河さん たしかに現場に行かないとね。

菊水先生 ちゃんと見るとは、そういうことだと思います。人と人とのコミュニケーションは、そういうことでしか生まれない。

白河さん 農村や漁村の男性は、婚活でかならずしも有利ではないんですけど、実際に農村や漁村に行って仕事をする姿を見せる婚活を行うと、カップル成立率が良くなるんですね。

菊水先生 そうでしょうね。

白河さん それは全ての男の人に言えるんでしょうね。自分が得意なこと、一生懸命になっている姿を見せることで、女性の共感を得られるんでしょう。やはりネットを介したやりとりだけでは、共感を得ることは難しいですね。

菊水先生 Twitterでフォロワーが多い人は、自分の弱みを見せている人。「その気持ちわかるよ」という共感性で、コミュニティが活性化されるという話を聞いたことがあります。それは当然だろうなと。現在の地位も大事だと思いますが、一方で、生身の人間情報がないと、婚活サイトの壁はどんどん高くなる。「実は失敗ばかりしているんです」とか、「子どもの頃にこういう経験をしました」「こういうのが好きでやってます」とか、もっと生身を見せると変わると思います。

白河さん プロフィールデータに、生身の情報を加えるということですね。なるほど。

菊水先生 捨てられた犬猫がもらわれていく時、前の飼い主にどういうことをされたのか、どこでどう捨てられたのかという歴史を書くと、すごい反応があるんです。

白河さん わかる、わかる!

菊水先生 何歳で毛色が何で、どこで飼われていて、と基本情報ですけど、それだけでは里親さんは反応しないですね。受け入れるのは「犬」であって「情報」ではないんですから。その生身をどれだけ見せられるかが重要なんです。

白河さん 生身で勝負って忘れかけていた感覚でした。楽しいお話をありがとうございました。



今週の気になる「お言葉」
乱婚の場合、出産経験があって子育てが上手な雌に妊娠してもらったほうが、雄は自分の遺伝子がたくさん残せる残せる可能性が高いので、経験豊かな雌がモテるんです。一方、一夫一妻の婚姻形態を持つ動物種では、若い雌がモテる。

インターネットを中心に情報が多くなりすぎていて、大事なものを見失ってきている段階かな。

「実は失敗ばかりしているんです」とか、「子どもの頃にこういう経験をしました」「こういうのが好きでやってます」とか、もっと生身を見せると変わると思います。

相手の気持ちになるというのは、すべての人間関係の基本になると思います。恋愛でも「相手が喜ぶからこれをしてみよう」と考えられると、自分本位のやり方ではなくなってくると思います。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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菊水健史
麻布大学 獣医学部伴侶動物学研究室 教授

1970年、鹿児島県生まれ。東京大学獣医学科卒業。獣医学博士。三共株式会社(現第一三共株式会社)神経科学研究所研究員、東京大学農学生命科学研究科(動物行動学研究室)助手を経て、2007年より麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室准教授、09年より同教授。専門は行動神経科学。同研究室では、母と子の絆と発達との関係、母子間・雄雌間のコミュニケーションの解析、犬の社会行動の3つを主なテーマに研究を行っている。最新著書に『いきもの散歩道—動物行動学からみた生物の世界—』(文永堂出版)がある。