白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回は、動物の行動学が専門の麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室教授、菊水健史さんをお招きしました。動物と人間、求愛行動の似ているところは何か、違うところは何かというお話から、恋愛上手になるためのヒントを探ります。

第4回 さまざまな婚姻の形、そしてもっと恋歌を歌うために

白河さん こうして動物の行動を見てくると、人間の社会に対してもの申したいことが出てくるのではないですか。日本は今後、ますます少子化が進むと思いますが、先生は何がうまくいっていないと思われますか。経済的な問題もありますが、本当にみんな恋愛をしてないです。恋歌を歌っていない状態だと思うんです。

菊水先生 そうですね。インターネットを中心に情報が多くなりすぎていて、大事なものを見失ってきている段階かなと。でも、きっと揺り戻しがありますよ。人と人との「生身の」接触の価値が、また考えられる時期がくれば、インターネットは情報のツールであり、人間社会で生きていくには、人と人との触れ合いが大事なんだという共通認識が生まれると、少し洗練された感じで復活すると思っています。

白河さん Twitterもあまり子どもの脳にはよくないという問題提起もされていますね。

菊水先生 最近の研究によると、共感を生む脳の部位が活性化するまで、平均6~8秒かかるそうです。 Twitterで短い文章を数秒で読むと1~2秒、ニュースもヘッドラインしか読まないから2~3秒。火山噴火があって何百人が死にましたとか読んで、「ヘー」と次にいくわけです。こういう文章や情報の出し方では、その現場にいる人たちの気持ちが伝わらない。

白河さん 情報処理するだけなら2秒でいいけど、「火山噴火で家族を失って悲しいだろう」という考えに至るまで、8秒くらいかかるわけですね。

菊水先生 本を読んだり映画を見たりすれば、2時間くらいは物語の中に入り、主人公の気持ちになって泣いたり喜んだりするわけです。情報のやりとりはTwitterでもヘッドラインでもいいんですけど、ヘッダーの後に、どれだけうまく誘導して共感社会を作るかが、メディアの作り込み方だと思うんです。

白河さん 共感を生むような脳を持っている男女でないと、恋愛、結婚、子育ては難しくなりますね。奥さんが一人で育児をしていて、一日じゅう大人と口をきかなくて大変だろう、とかわからないですよね。

菊水先生 そういう心を育てるのであれば、共感の社会を作るためにメディアは何をすべきか、会社は何をすべきかとか本気で考えないと、安易な方にしか流れない。となると、ちょっと危機的かなという感じがします。

白河さん 共感できる社会とは、つまりコミュニティですよね。コミュニティが崩壊したことも、共同の子育て、共同の繁殖を妨げている感じがします。なにしろ人間は、共感がなければ繁殖行動ができない動物ですし。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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菊水健史
麻布大学 獣医学部伴侶動物学研究室 教授

1970年、鹿児島県生まれ。東京大学獣医学科卒業。獣医学博士。三共株式会社(現第一三共株式会社)神経科学研究所研究員、東京大学農学生命科学研究科(動物行動学研究室)助手を経て、2007年より麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室准教授、09年より同教授。専門は行動神経科学。同研究室では、母と子の絆と発達との関係、母子間・雄雌間のコミュニケーションの解析、犬の社会行動の3つを主なテーマに研究を行っている。最新著書に『いきもの散歩道—動物行動学からみた生物の世界—』(文永堂出版)がある。