白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回は、動物の行動学が専門の麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室教授、菊水健史さんをお招きしました。動物と人間、求愛行動の似ているところは何か、違うところは何かというお話から、恋愛上手になるためのヒントを探ります。

第3回 人間にも応用できる戦略は?

菊水先生 コーチング法でも今、相手の信頼を得るために、シンクロナイゼーションが重要と言われています。具体的に言うと、相手と同じことをするのがすごく大事なんです。営業マン向けの教科書に、相手が注文したメニューと同じものを注文しなさいとか、相手が足を組んだら自分も組みなさいとか、話の口調を合わせなさいとか書いてありますよね。こうして「行動の同期化」を図ると、相手の脳との間に共感が生じてきます。まだ科学的には実証されていませんが、この共感時に脳内では絆形成に関与するといわれるホルモンの「オキシトシン」が放出されるといわれています。

白河さん オキシトシンが信頼度を上げるんですね。

菊水先生 そうです。オキシトシンは行動がシンクロすると分泌が進みます。人間のお母さんと赤ちゃんの研究ではだいぶ明らかにされてきました。子どもが笑うとお母さんが笑う、お母さんが笑うと子どもが笑う、という感じで作用します。すごく簡単なことですが、それをやると信頼度がぐっと上がり、オキシトシンも上昇しています。

白河さん 男女の場合でも、それは同じですか。

菊水先生 ちょっとしたしぐさを一緒にする、歩くスピードを合わせる、同じ料理を食べる、料理をシェアするなどですね。小さなことですが、これを組み合わせていくと、お互いの信頼感が上がり、緊張感が溶けてきて、距離が縮まるきっかけができるのではないかなと。

白河さん ああ、わかります。メールも相手が丁寧な口調できたら丁寧な口調で返す、絵文字を使ってきたら絵文字で返すとか。

菊水先生 いろいろな意味で「歩調」を合わせるのは、信頼関係を築くために有効な手段です。最初のデートで「この人だな」と思ったら、自分から歩くスピードを合わせるといい。逆に嫌だなと思ったら、わざと歩調をずらす(笑)。

白河さん わざと違うメニューを注文するとか(笑)。こういう行動は重要ですよね。とてもすごく素敵な女性なのに縁遠い人って、「絶対」という言葉を使う人が多いんです。「絶対それ食べられない」「これは絶対にだめ」とか言っていると、相手を見つけるのは難しい。

菊水先生 そうですね。共感性や信頼は、ほんのちょっとしたコミュニケーションのやりとりなんです。ちょっとずつ気をつければ、お互いの信頼関係が深まります。

白河さん 心理学のカウンセリングでは「ミラー」という手法もありますね。信頼関係を築くために同じ動作をするとか、相手の言葉と同じ言葉を返してあげるとか。例えば「今日すごく寒くない?」と言われたら、「本当にすごく寒いよね」みたいに。

菊水先生 それだけでいいです。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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菊水健史
麻布大学 獣医学部伴侶動物学研究室 教授

1970年、鹿児島県生まれ。東京大学獣医学科卒業。獣医学博士。三共株式会社(現第一三共株式会社)神経科学研究所研究員、東京大学農学生命科学研究科(動物行動学研究室)助手を経て、2007年より麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室准教授、09年より同教授。専門は行動神経科学。同研究室では、母と子の絆と発達との関係、母子間・雄雌間のコミュニケーションの解析、犬の社会行動の3つを主なテーマに研究を行っている。最新著書に『いきもの散歩道—動物行動学からみた生物の世界—』(文永堂出版)がある。