白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回は、動物の行動学が専門の麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室教授、菊水健史さんをお招きしました。動物と人間、求愛行動の似ているところは何か、違うところは何かというお話から、恋愛上手になるためのヒントを探ります。

第2回 雌の配偶者戦略――「美しい雌」は人間だけ

白河さん 動物の雌の配偶戦略に話を戻しましょう。雌の性行動には「性的魅力」「誘因行動」「受容性」という3段階があるそうですね。

菊水先生 「性的魅力」とは、出会った時に雄が追いかけてくるモチベーションを上げるためのものです。動物には繁殖期があるので、交尾すべき時に自分が受け入れ可能であることを匂いや色、形などで伝えるわけです。

白河さん 雄はそれを察知できる能力があるわけですよね、人間の場合は、自分が女性に受け入れられているかいないか、すごく鈍感な男の人が多くて(笑)。そういう男性は恋愛に失敗しがちな感じがします。

菊水先生 2つめの「誘因行動」は、人間でいうと誘惑ですね。交尾が最終ゴールなので、雄を引きつけて乗っかってもらわなければいけない。自分がコレ!と思った雄に対して、そのシグナルを出すんです。ラットの場合は、雄の脇腹をつっついたり、目の間でお尻を見せて跳ねたりします。

白河さん それは雄のディスプレイとは違うわけですか。

菊水先生 雄はオープンパブリックに、全ての雌に対してやるわけですが、雌は「このチャンスでこの雄」と決めた時にやります。

白河さん そうか、雌は選んでいるんですね。女性が肌を出すと、男性はみんな自分が受け入れられていると勘違いしちゃいますが、女性は本当は自分が選んだ人にしか見せちゃだめと。

菊水先生 普段は重いコートを着ていて、飲みに行って2人きりになったらコートを取ればいい。気が合ったら、ちょっとだけ膝を叩く、肩を触るというのが、女性側からのシグナル。それを限られた男性にだけ出すと、男は引っかかりやすい(笑)。

白河さん 動物の雌は恋歌を歌わないんですか。

菊水先生 一部の鳥類を除いて、歌い返しませんね。

白河さん そして最後は「受容性」ですよね。要するにマウンティングされた時に動かない、完全に雄を受け入れた、拒否しないということですね。誘っておきながら拒否、ツーンみたいなことになると、雄はすごく傷付きますね。

菊水先生 もういたたまれないですね。雄は大変な葛藤状態になり、ねずみは穴掘りをしてしまいます。

白河さん 人間だって同じだと思います。やりきれなくて荒れてしまうと思います。

菊水先生 飲みに行くより、夜の工事現場で働いたほうがすっきりすると思います(笑)。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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菊水健史
麻布大学 獣医学部伴侶動物学研究室 教授

1970年、鹿児島県生まれ。東京大学獣医学科卒業。獣医学博士。三共株式会社(現第一三共株式会社)神経科学研究所研究員、東京大学農学生命科学研究科(動物行動学研究室)助手を経て、2007年より麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室准教授、09年より同教授。専門は行動神経科学。同研究室では、母と子の絆と発達との関係、母子間・雄雌間のコミュニケーションの解析、犬の社会行動の3つを主なテーマに研究を行っている。最新著書に『いきもの散歩道—動物行動学からみた生物の世界—』(文永堂出版)がある。