今回のテーマは「理数婚活のススメ」。奈良先端科学技術大学院大学の博士課程に在学しつつ、「席替えシステム」を活用した婚活サービスを提供するベンチャー企業の社長でもある黒岩将さんを招き、科学を取り入れた婚活ビジネスの最前線について話を聞きました。
第1回 最適席配置システムで婚活の効率は上がるか
気になる異性の近くに座りたいのに、なかなか思い通りにいかずにチャンスを逃した――そんな合コンの経験から、黒岩さんの会社では席配置を高速で計算する「ザ・セキガエ」というシステムを開発。携帯電話のサービスやお見合いパーティーのツールとして提供している。両思いほど近くに来るのが、このシステムのポイント。ドキドキ感は一気に高まるという。
白河さん 黒岩さんと初めてお会いしたのは、2年ほど前。「合コンで気になる異性の近くに座ることができる席替えシステムを開発した」とうかがい、とても興味を持ちました。婚活って費用的にも時間的にも、精神的にもとてもコストがかかるでしょう。これだけ科学技術が進歩しているのだから、もっと効率的に人の仲を取り持つようなシステムがあってもいいと思っていたので、これは画期的な合コンツール、お見合いパーティーのツールになると注目しました。開発のきっかけは何だったのですか。
黒岩さん きっかけは大学院の仲間と一緒に参加した、5対5の合コンです。いいなと思った女の子がいたんですが遠い席に座っていて、僕の後輩と仲良く話していたので、なんとか近くに行きたいと。途中でトイレに立った時、仲間の一人から「お前の隣の子がいいから席を替えてくれ」とメールが来たので、戻ってから「席替えしようや」と提案し、みんなに適当に動いてもろうたんです。そうしたら、僕の前には狙った女の子が来たけれど、メールをくれたやつは狙いの子から離れてしまい、ずっと膨れっ面。みんなの希望通りに席替えするのは難しいなと思い、研究室に戻ってから計算してみたんです。
白河さん 10人だと組み合わせは何通りくらいあるんですか?
黒岩さん それが90万通りくらいあるんです。その中から、全員が希望する人と正面や横に座れる席配置を頭で考えるなんて、とても無理です。 そこで「アルゴリズム」を用いて、席配置の「最適解」を探すことにしました。最適化とは、ある条件を満たして、条件にマッチするような解を求めることです。最適化の技術は大学に山ほどある。僕の博士課程での専門も最適化の一種です。僕の会社の役員も、当時大学院生だったのですが、彼が、この最適席配置を求めるアルゴリズムを考え、実装し、修士論文はそれで書きました。
白河さん それで開発したのが、最適配置システムの「ザ・セキガエ」ですね。どんなシステムか解説していただけますか。
黒岩さん 「ザ・セキガエ」は携帯電話で遊べるサービスにしました。合コンの参加者は、自分が近くに座ってアプローチしたい異性の番号を、第1希望から第3希望までメール本文に書き込みます。自分の番号は件名に入れます。それをうちの会社のサーバに送ると、全員の希望をできるだけ満足させる席配置を、各自の携帯電話に返します。
白河さん 席配置はコンピュータで計算して、瞬時に返してくるのですか?
黒岩さん 10人だったらほぼ瞬時ですね。人数が増えると組み合わせ数は指数関数的に上がるので、20人になったら3分ほどかかります。時間だけでなく難易度も急上昇しますね。先日やった80人のお見合いパーティーでは、計算時間を10分に設定し、その計算結果の通りに座ってもらいましたが、一組だけ希望した人が別のテーブルにいるという事態を招いてしまいました。もう15秒計算していたら、全員がほぼ満足する席配置を求めることができたのですが。
白河さん もう15秒! いったいどういう風に最適化していくのですか?
黒岩さん まず、それぞれの希望をコンピュータに入れていきます。コンピュータは最初、コンピュータの中で、各自を適当に座らせてみるんですよ。その時の全員の満足度を計算して、点数化していく。その作業をひたすら続けて、その中から点数が一番高い席配置を探していく。その探し方が肝です。
白河さん その結果、気になる相手が、自分の近くにくるわけですか?
黒岩さん そうですね。相手も自分を選んでいたら、ほぼ真っ正面か横に来ます。そういう席配置を見つけます。