白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは、東京大学教養学部付属教養教育高度化機構で教鞭をとる坂口菊恵さん。著書『ナンパを科学する』では、さまざまな科学的データを用いて、進化心理学の領域からナンパや配偶行動を検証して話題になりました。この対談でも、男と女の感じ方の違いや配偶者獲得の戦略について、たっぷりとお話していただきます。

第4回 婚姻システムの意味とは?

白河さん 少子化議論をしていると、「一夫多妻になればいいじゃん」と軽く言う男性が多いんですが、そういう人はよほど自分に自信があるんですね。

坂口先生 牧畜社会や農耕社会など、男性が生産手段をコントロールしている場合や貧富の差が大きい場合には一夫多妻になりやすいですね。女性も貧乏な男性と一夫一妻で結婚するよりも、お金持ちな男性の第二、第三夫人になる方を喜びます。お金持ちの第一夫人は家事や育児を後輩の妻たちに押し付けて、自分はたくさん子どもを産めるというメリットもあります。

白河さん 最近日本の女の子たちにも、一夫多妻になればいいと言う人がいます。

坂口先生 女性側から見たら、完全な一夫一妻制で、いい男を特定の女性に独占されるより、シェアしたいとい思う状況なのではないでしょうか。自分にもアクセス権を与えろと(笑)。

白河さん 若い世代では、できちゃった婚も増えています。それも一つの変化だと思いますが。

坂口先生 昔の農村、祖父母くらいの世代だと、夜這いの風習が残っていたり、子どもが生まれるまで籍を入れていないということも多かったはずです。一夫一妻的な家族制度のイデオロギーは、戦後、急速に欧米から取り入れたもの。日本の母親と子どもが一体だというイデオロギーも大正時代に普及してきたもので、それ以前は子どもを育てられなかったら養子に出していたり。

白河さん 母親も労働力なので、母親だけが育てるわけではなかったですしね。私は今の日本は、まだまだ女性にとって生きにくい社会だと思っています。もっとパートナーと楽しく暮らしたり、もっと楽しく子育てできる社会になるには、どういう風に今の日本社会が変わればいいと思いますか。

坂口先生 いろんな文化の家族形態の変化を見ても、やはり家族形態は生業形態と密接にリンクしています。日本でも肉体労働にあまり依存しない第3次産業が上がってきて、女性の労働力が評価されてきました。雇用形態や労働形態が変わらないと、家族の形態は変わらないと思います。

白河さん そこをいじるのが先ですか。

坂口先生 今言われているのが、若い世代に安定した収入が見込めないこと。そういう経済問題が先だと思います。

白河さん これからは男性一人で家族を養える時代ではありません。夫婦二人で働くのが当たり前という雇用形態に変わらざるを得ないでしょうね。

坂口先生 ただ、女性も専門性の高い仕事をするようになると、数年ごとに転勤させられて、恋人ができるような時期に住む場所が一定していないという悩みも出てきます。すでにカップルになっている人、なりつつある人を敢えて引き裂くような雇用形態のまま、家族を持ちなさいというのは無理な話。女性が家族を大切にすれば、今度は昇進やポストを捨てなければならないわけです。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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坂口菊恵
東京大学 教養学部付属教養教育高度化機構 特任助教

1973年、北海道生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。日本学術振興会特別研究員。上京後、数年間のフリーター生活を経て東京大学に入学し、進化心理学を学ぶ。専修大学、早稲田大学、東京女子大学の非常勤講師を経て、2010年より現職。09年、ヒトの恋愛・性行動にまつわる疑問を進化心理学の視点から検討した著書『ナンパを科学する——ヒトのふたつの性戦略』(東京書籍)を発表して注目を集める。
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