白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは、東京大学教養学部付属教養教育高度化機構で教鞭をとる坂口菊恵さん。著書『ナンパを科学する』では、さまざまな科学的データを用いて、進化心理学の領域からナンパや配偶行動を検証して話題になりました。この対談でも、男と女の感じ方の違いや配偶者獲得の戦略について、たっぷりとお話していただきます。

第3回 女性が好む男性、男性が好む女性

白河さん 女性の男性の好みは、排卵に関係してくるという研究がありましたよね。女性は自分が妊娠しにくい時は安全策の男性を好むけれど、自分が妊娠しやすいときは身体的に魅力のある男性に好みがシフトするという。

坂口先生 排卵の少し前に性ホルモンの濃度がぐっと上がって女性は性的にアクティブになります。新しい出会いに対して積極性が出る一方で、危険そうな状況や自分の意に添わないことに対する抵抗性は高まるといわれています。性的にアクティブになるけれど、「ただしイケメンに限る」というわけです。

白河さん 男性はがっかりしそうですね。パートナーがいる女性の場合は排卵期にどう変化しますか?

坂口先生 カップルの場合は、単純に二人の間の性行動が増えるかというとそうではなくて、パートナーが魅力的じゃない場合は、そのパートナーに対する性的な欲求より浮気の欲求が強くなります。つまり、女性はよりよい男性への目移りするんです。あまり魅力的じゃない男性は、さらに排除されるとも言えます。ただ、この実験は非常に微妙な写真を使ったり、微妙な質問をしたりして無意識的な判断を引き出したもので、その女性たちが本当に浮気をするかは、別なことなのですけど。

白河さん よりよい男性に目が向くのはなんとなくわかっていたんですが、より排除されるというのは気づきませんでした。

坂口先生 一方、排卵した後の高体温期には、黄体ホルモンという妊娠に備えたホルモンの値が上がります。その時は親族みたいな人、子育てを手伝ってくれそうな人に親近感が増すといわれます。

白河さん 女性は1カ月のうちに、短期戦略向きの男性を求めてしまう時期と、長期戦略向きの男性を求めてしまう時期とがあるということですね。誠実な夫が欲しいと思ったら、高体温期に選ぶ方がいいですね。

坂口先生 そうですね。あまり燃えないかもしれないですが(笑)。

白河さん 最近は「セックスしたくないけど、子どもは欲しい」言う女性も増えています。

坂口先生 性的な欲求についての質問に対して、「セックスにはぜんぜん興味ないです」という女性は一定数存在します。女性はかなり個人差が激しくて、口を開けば猥談ばかりの人もいれば、恋愛話や結婚には興味あるけど、男性には興味ない、性行動には興味ない、という人もいます。ただ、それで「結婚したいです」とか言われても…。

白河さん それは経験値と関係があるのでしょうか。

坂口先生 20歳前後で性的な経験がない女性の中には、男性との関係に興味がないという人も多いですね。性的な発達を追った研究をしていないのでよくわかりませんが、人によっては将来的に性的なことに興味を持つのかもしれませんし、一部は興味がないままかもしれません。これはそもそも婚活以前の問題ですよね。

白河さん そう、そこが婚活ブームの怖いところです。男性に興味がなかった人も「婚活しなくちゃ」と出て来てしまった。婚活以前に、まずボーイフレンドを作ってみたら?と思うのですが。とはいえ、婚活で彼氏、彼女を作るのも一つの目的なので、それは悪いことではありませんが、あまりに無防備すぎるのが怖いと思うこともありますね。



「第4回 婚姻システムの意味とは? なぜ人間は乱婚ではないのか?」へつづく

今週の気になる「お言葉」
一言で言うと、女性は男性の資産狙い、男性は美女狙いです。

長期的な相手ならば誠実に自分に投資してくれる男性を好みます。短期的な相手ならば身体的魅力を重視します。

男性は、長期的な相手ならば貞節な女性を好みますが、短期的な相手ならばそうではない女性を好みます。

排卵の少し前に性ホルモンの濃度がぐっと上がって女性は性的にアクティブになります。(中略)性的にアクティブになるけれど、「ただしイケメンに限る」というわけです。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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坂口菊恵
東京大学 教養学部付属教養教育高度化機構 特任助教

1973年、北海道生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。日本学術振興会特別研究員。上京後、数年間のフリーター生活を経て東京大学に入学し、進化心理学を学ぶ。専修大学、早稲田大学、東京女子大学の非常勤講師を経て、2010年より現職。09年、ヒトの恋愛・性行動にまつわる疑問を進化心理学の視点から検討した著書『ナンパを科学する——ヒトのふたつの性戦略』(東京書籍)を発表して注目を集める。
http://orange.zero.jp/ksakaguti.bird/