白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは総合研究大学院大学教授の長谷川眞理子さん。性にまつわる様々な問題は、先生が専門とする生物学の大きなテーマ。生物界に見られる雄と雌の関係から、人間の男と女の関係を考察。負け犬や草食男子、浮気の話、人間の子育ての話と、なるほど納得の話を披露してくださいました。

第2回 男と女、二つの性がある理由

白河さん お金持ちがいいという尺度でさえも通用しない?(笑)

長谷川先生 まずお金持ちで選び、さらに顔、性格、趣味、価値観……と条件を加えるでしょう。そうやっていくと、お金持ちが一番の尺度でないという結論が出たり(笑)。みんなが自分の尺度に合致する人を選ぼうとすれば、なかなかマッチングしないでしょうね。

白河さん 80年代までは、日本人の約95%がつがいになっていました。地域の中、会社の中など、狭い範囲、似通った価値集団の中で、ある程度統一の尺度で選んでいたんですね。だからみんな文句も言わず、あぶれもせず、結婚できていたのかと思います。

長谷川先生 個人の選択肢があまりなくて、年頃になったら結婚するのが当たり前だと思っていたのね。「理想の相手なんていない」「一緒になったらいいところが見つかる」「100%幸せでははないけれど仕方がない」と。でも今は、仲人さんがいる結婚式は少なくなったでしょう。

白河さん もうほとんどありません。今はマッチングが難しくなり、廃業する仲人さんも多いんです。仲人さんの役割りも変わり、家柄や人柄のマッチングをするだけなく、二人が恋愛感情を持つように、気持ちの盛り上げまでやらなくてはいけないそうです。出会いはお見合いだけど、恋愛結婚をしたいと。それでさらに難しくなっています。

長谷川先生 動物のカップルは、一緒に暮らす目的は子育てだけです。でも人間にはもっといろいろな意味があるでしょう。これだけのいろいろなことを考える脳が、完全に合致する相手を見つけるなんてあり得ません。

白河さん あり得ない!(笑)。しかも自由度が増し、社会的プレッシャーもなくなった。それでどういう時代になったかというと、1990年生まれ、今20歳の将来人口推計は、男女ともに4人に1人は独身、女性の3人に1人は子どもを生まないと予測されています。そうなると繁殖的には危機的状況ですね。種としては衰退なんですか。

長谷川先生 仕様がないことね。でも、どの生物にも種全体をよくするための方策は備わっていないんですよ。みんな自分の繁殖しか考えてない。種の存続は後付けの結果です。

白河さん 自分の子どもが欲しいと言う女性はけっこういますが、男性には少ない気がします。

長谷川先生 そうですね。ただ歴史的に見ると、自分の子どもがどこかにいる、という例は多いようです。それにしても、男性が本当に安定した社会の中で、こんなに長生きするなんて、ホモサピエンスの20万年の歴史の中でも、ごく最近のこと。しかも日本には兵役がなく、戦争で死ぬ可能性はほぼゼロです。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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長谷川眞理子
総合研究大学院大学教授

1976年東京大学理学部生物学科卒業。同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。早稲田大学政治経済学部教授を経て、現職。ニホンザル、チンパンジー、野生のヒツジ、クジャクなど多くの動物を観察した成果を投入し、進化生物学、行動生物学の視点から複雑な人間の研究に取り組む。著書に『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店)、『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(集英社新書)、『オスとメス=性の不思議』(講談社現代新書)など。