白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

サイエンスカフェは最終回。今回は日本医科大学大学院教授の佐久間康夫先生をお招きしました。脳と性ホルモンの専門家である佐久間先生に、男脳と女脳の違いや恋愛と脳との関係、性ホルモンの役割などについて、やさしく解説していただきました。

第2回 男の脳、女の脳はいつ作られる?

脳は自分の性別をどう認識しているのだろう。脳が認める性別と、体の性別の不一致に悩む人がいることを考えると、脳の性別と、性別とは別々にできてくるとも思える。男の魂、女の魂は、いきなりやってくるのではなく、性ホルモンの影響で作られるという、目から鱗のお話を佐久間先生が解説。

白河さん 男の脳、女の脳は、いつ作られるのでしょうか?

佐久間先生 脳の性差は、お母さんのお腹の中にいる時に決まります。人間の場合は妊娠初期の終わり頃に男性ホルモンが働くと、脳が男になります。妊娠90日めくらいから、性ホルモンがどんどん出てくるんです。これは精巣が勝手に作るんですよ、脳のコントロールを受けないで。この精巣から出てくる「テストステロン」という男性ホルモンの作用で、脳が男性型化します。少なくともネズミでは、あまり遺伝的には決まりません。

白河さん お母さんのお腹のなかで男性脳、女性脳が作られるんですね。その時点では、雄か雌かの性別は決まっているんですよね?

佐久間先生 決まっています。そこがトリッキーなんだけど。そもそも雄と雌がいる有性生殖では、大きな配偶子(卵子)と小さな配偶子(精子)があって、大きな配偶子を作るほうを雌と定義し、小さな配偶子を作るほうを雄と定義しています。だから卵巣を持っているのは女性で、精巣をもっているのは男性。精巣になるか、卵巣になるかはY染色体があるかないかで決まります。

白河さん 男、女の性別を決めているのは遺伝子。男にはY染色体があり、女にはX染色体が2つある。だけどそこから先、脳の性は遺伝子ではなく、ホルモンが決定するわけですね。

佐久間先生 そうです。遺伝子が決めているのは、精巣ができるか、卵巣ができるかということだけ。脳の性別は性ホルモンの作用の結果で、遺伝子の直接作用ではありません。お母さんのお腹の中にいる間に、自分の精巣が作ったホルモンが脳を雄型化するんです。

白河さん 男の子は精巣があるから、そこから男性ホルモンが出てくる。では女の子の場合は? 

佐久間先生 精巣がない女の子の脳は大量のテストステロンを浴びないから、脳は基本的な設計図通りに女性型になります。ところが、例えば妊娠中の母親が大量に男性ホルモンをとってしまったら女の子の脳が男性化しちゃったとか、母親が強いストレスにさらされると、生まれた男の子にはホモセクシュアルが多いということもあります。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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佐久間康夫
日本医科大学大学院 医学研究科システム
生理学分野 教授

1975年、横浜市立大学大学院医学研究科生理系修了(医学博士)。群馬大学助教授、ロックフェラー大学准教授、新潟大学助教授、弘前大学教授を経て、93年より日本医科大学教授、医学部生理学(システム生理学)講座の主任を務める。専門は生殖生理学、神経内分泌学、行動神経科学。エストロゲンをはじめ性ホルモンと脳、性行動との関連性、脳の発達と性分化などについて研究を行っている。
http://www.nms.ac.jp/nms/seiri1/