白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

サイエンスカフェは最終回。今回は日本医科大学大学院教授の佐久間康夫先生をお招きしました。脳と性ホルモンの専門家である佐久間先生に、男脳と女脳の違いや恋愛と脳との関係、性ホルモンの役割などについて、やさしく解説していただきました。

第1回 男と女、脳の違いとは?

白河さん 結局は男脳と女脳でたいした違いはないということ?

佐久間先生 いえ、男の脳と女の脳は違います。そうでなければ男性は女性を好きにならないし、女性は男性を頼もしいと思わない。だけど、認知機能であるとか、芸術を楽しむとか、創作をする能力では差がないだろうと言う研究者もいます。

白河さん 世の中的には「地図が読めない男はダメだ」なんていう見方もありますよね。女はこうであるべき、男はこうであるべきという先入観にも規定されがちです。

佐久間先生 それは生物学的な性別のほかに、男性、女性として育ってきたことに関連しています。例えば、近所のスーパーの棚に何が並んでいるかは、女性のほうがよく知っているわけです。一方、新宿から外苑前を経由して東京駅に行くとなると、男性のほうが慣れている。それは毎日通勤に地下鉄を使っているから。つまり日頃からの学習効果と、性染色体や性ホルモンが違うということが重なり合って、違いが出たといえます。

白河さん 男と女は違うからこそ面白いし、違うからこそ引かれ合う。違うからこそ悩みも多い。その違いをお互いにわかっていたほうがいいということですね。

佐久間先生 そうですね。例えば、科学研究や創作の世界では、男性と女性が共同で仕事をすると実りが多いんです。最近では、性行動や性分化の研究者には女性も増えてきました。アメリカでは研究者の半分が女性です。

白河さん 女性の医者も増えましたよね。ただ高学歴、専門職でバリバリ働く女性は、男性に比べて職業的な野心を持っている人が少ない気がします。闘って勝っていくのを好まない、争いごとになると引いてしまうところがある。それは脳の差というより育てられ方が影響しているのでしょうか?

佐久間先生 育てられ方もありますが、脳の働きにも差があると思います。ネズミの場合でいうと、雌と雄、それぞれに固有の行動パターンがあります。雌に固有の行動は、母性行動(子育て)と交尾行動の二つ。一方、縄張りを作ったり攻撃行動をしたり、雌にマウントする生殖行動は、雄型の行動です。人間も通路にたまって談笑しているのはおばさんが多いし、改札口で正面衝突して殴り合いを始めるのはおじさんでしょう(笑)。行動は脳の働きの一つの表現に他ならないので、行動の背後には雄雌で異なる脳の働きがあります。

白河さん 脳が直接、性行動を命令するのですか?

佐久間先生 いえ、雄雌それぞれの行動は、それぞれの性ホルモンが効いて起こるものです。ほ乳類の場合は、脳が性ホルモンの分泌をコントロールしていて、それによって生殖機能を調整しています。

白河さん バリバリな働き女子も、ホルモンの働きには逆らえない?

佐久間先生 ただ、高等教育を受けるような女性は、人口の正規分布の真ん中にはいないからね。単にホルモンの差だけでは説明しきれない。「女の子はおとなしくしていなさい」なんていう親や周囲の言葉を振り切って、志をもって大学で学んだり、社会に出て働いたりしているのでしょうから、もっと野心を持ってもらってかまわないと思いますね。



「第2回 男の脳、女の脳はいつ作られる?」へつづく

今週の気になる「お言葉」
男の脳と女の脳は違います。そうでなければ男性は女性を好きにならないし、女性は男性を頼もしいと思わない。だけど、認知機能であるとか、芸術を楽しむとか、創作をする能力では差がないだろうと言う研究者もいます。

雄雌それぞれの行動は、それぞれの性ホルモンが効いて起こるものです。ほ乳類の場合は、脳が性ホルモンの分泌をコントロールしていて、それによって生殖機能を調整しています。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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佐久間康夫
日本医科大学大学院 医学研究科システム
生理学分野 教授

1975年、横浜市立大学大学院医学研究科生理系修了(医学博士)。群馬大学助教授、ロックフェラー大学准教授、新潟大学助教授、弘前大学教授を経て、93年より日本医科大学教授、医学部生理学(システム生理学)講座の主任を務める。専門は生殖生理学、神経内分泌学、行動神経科学。エストロゲンをはじめ性ホルモンと脳、性行動との関連性、脳の発達と性分化などについて研究を行っている。
http://www.nms.ac.jp/nms/seiri1/