白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回は、動物の行動学が専門の麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室教授、菊水健史さんをお招きしました。動物と人間、求愛行動の似ているところは何か、違うところは何かというお話から、恋愛上手になるためのヒントを探ります。

第3回 人間にも応用できる戦略は?

人と人が信頼関係を築くには、お互いが出しているシグナルを上手に感じることが必要。相手と感情を通わせる「共感性」が育つことで、人間関係も恋愛関係もスムーズになるという。歩調を合わせたり食べ物をシェアするなど簡単なことで共感性は育つ。見習うべきは、黙って人間の気持ちに寄り添う犬の姿なのかも。

白河さん 動物の配偶者獲得戦略の研究から、人間の恋愛に応用できる戦略があれば、ぜひ教えていただきたいのですが。

菊水先生 まず相手の警戒心を解くには、右に座ることですね。これは営業マンの方など経験から感じていると思います。通りでキャッチをする時も、かならず相手の右側から迫るはずです。

白河さん それは右脳と左脳の役割が違うからですか。

菊水先生 そうです、最初の反応性が違います。右から入る音と左から入る音では感情の反応も違うし、右目で見るのと左目で見るのも違っています。

白河さん 左右の脳で役割が違うんですね。

菊水先生 大脳の左半球には安心や喜びなど正の感情に関する部位が、右半球には警戒や不快など負の感情に関与する部位が存在することが知られています。脳と運動は左右が逆になるため、右から話しかけられたら左半球が反応し、左側から話しかけられたら右半球が反応します。

白河さん なので「親和的な」関係を築きたいと思ったら、相手に右から話しかけたり、右に座ったりするほうがアプローチが成功しやすいということですね。

菊水先生 あとはお互いが出しているシグナルを、どう上手に拾うかということですね。つまり「共感性」です。

白河さん 共感性とは、どういうものですか。

菊水先生 心理学的な定義では「感情移入」ですね。「同情、同感」も近い言葉です。共感性が育つのは、実は母子間なんですよ。「シンクロナイゼーション」というんですが、共感行動が上手にとれるお母さんの子どもは、やはり共感性が高くて、相手を理解するのが早いと言われています。母子間のシンクロナイゼーションがなくなってしまうと、子どものそううつ傾向が高くなります。

白河さん 母子関係はこんなところまで影響するんですね。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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菊水健史
麻布大学 獣医学部伴侶動物学研究室 教授

1970年、鹿児島県生まれ。東京大学獣医学科卒業。獣医学博士。三共株式会社(現第一三共株式会社)神経科学研究所研究員、東京大学農学生命科学研究科(動物行動学研究室)助手を経て、2007年より麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室准教授、09年より同教授。専門は行動神経科学。同研究室では、母と子の絆と発達との関係、母子間・雄雌間のコミュニケーションの解析、犬の社会行動の3つを主なテーマに研究を行っている。最新著書に『いきもの散歩道—動物行動学からみた生物の世界—』(文永堂出版)がある。