白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回は、動物の行動学が専門の麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室教授、菊水健史さんをお招きしました。動物と人間、求愛行動の似ているところは何か、違うところは何かというお話から、恋愛上手になるためのヒントを探ります。

第2回 雌の配偶者戦略――「美しい雌」は人間だけ

動物は雌が雄を選ぶのが一般的。雌の性戦略は雄より複雑で、「コレ」と決めた雄にしかシグナルを出さないし、優秀な遺伝子を持つ雄と浮気をしつつ、つがうのは子育て熱心な雄だったりする。一方、人間は男性が女性を選ぶ傾向が強い。美しさに磨きをかけ、資源を多く持つ男性に選んでもらうよう、人間の女性は性戦略を変化させてきたという。

白河さん 人間の恋愛では美人が得ですが、動物の世界を見渡すと、雄のほうが美しいんですよね。魚も鳥も雄のほうが色はきれいで派手。なぜ美しい雌は人間にだけ生まれるんですか。

菊水先生 動物の性戦略というのは、雌動物が優秀な遺伝子を持っている雄動物を選ぶ選択権を持っていて、雄は選ばれたら「はい、お願いします」という関係です。しかし人間は進化の過程で、食糧を蓄えることができるようになった時から性の駆け引き戦略が変わり始めました。雄の資源の持ち度に差が生まれたんです。

白河さん 資源豊富な雄もいれば、資源が持てない雄も出てきたわけですね。

菊水先生 婚姻を結んだ後に子どもを育てる時、どちらが自分の遺伝子を多く残せるかとなると、明らかに多くの資源を保有している雄なんですよ。それは一夫一妻より価値が高いんです。そうすると人間の女性は、たくさん資源を持っている雄に選ばれることが大事になり、自分が「選ぶ」立場から「選ばれる」立場に変わった。女性はきれいに見せることで、資源保有の高い男性から選んでもらうという戦略です。何年にも渡り、時には世代を経て資源を持てるのは人間だけなので、美しい雌動物は人間にしかいないのではないでしょうか

白河さん 父系社会とも関係があるそうですね。

菊水先生 そうですね。もともと人間の社会は母系社会ですが、財産が父親から息子に引き継ぐことで、自分の遺伝子をたくさん世の中に残せるようになる。それで父系社会が進みました。

白河さん なるほど、それで女性はより美しく、男性は美しい女性を選ぶと。一夫多妻にもなりますね。現代でも法律の縛りはあっても、実質的には一夫多妻の傾向があります。特に離婚して2度も3度も再婚する「時間差一夫多妻」は多いですね。

菊水先生 アメリカでは、社会的地位が高い男性ほど結婚・離婚を3~4サイクル繰り返してますね。それで子どもが10人とか。実質的な一夫多妻状態です。

白河さん 全員に養育費を払って大変ですよね。

菊水先生 それができるような資材を持っているということでしょう。




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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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菊水健史
麻布大学 獣医学部伴侶動物学研究室 教授

1970年、鹿児島県生まれ。東京大学獣医学科卒業。獣医学博士。三共株式会社(現第一三共株式会社)神経科学研究所研究員、東京大学農学生命科学研究科(動物行動学研究室)助手を経て、2007年より麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室准教授、09年より同教授。専門は行動神経科学。同研究室では、母と子の絆と発達との関係、母子間・雄雌間のコミュニケーションの解析、犬の社会行動の3つを主なテーマに研究を行っている。最新著書に『いきもの散歩道—動物行動学からみた生物の世界—』(文永堂出版)がある。