白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回は、動物の行動学が専門の麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室教授、菊水健史さんをお招きしました。動物と人間、求愛行動の似ているところは何か、違うところは何かというお話から、恋愛上手になるためのヒントを探ります。

第1回 雄の配偶者獲得戦略――恋歌を歌う

菊水先生 一番簡単なのは、大きい車に乗って高い服を着て、金持ちで力があると誇示することですね。若い男の子がやるディスプレイとしては、近代文明の世界では共通しています。

白河さん 最近の女の子は車に魅力を感じなくて、男性もデートのために車を買う感覚がなくなっています。他にわかりやすい手段ってあるんですか?

菊水先生 スポーツですね。女性が魅力を感じる男性の条件は、一つは顔が左右対称性であること、もう一つは病気ではないこと、という調査結果があります。そういう意味では、スポーツができるのは健康の証。さらに競争に勝っているともいえます。雄は競争に勝つほうが優秀な遺伝子を持っている。昔はそれがケンカでしたが、今はスポーツに置き換えられている。

白河さん だから野球やサッカーの選手はモテる! もう一つ、男性がモテたくて始めるのがバンドなんです。やっぱり男の恋歌は効果があるのかなと。

菊水先生 そうだと思います。一例を挙げると、中国のミャオ族の男性は、プロポーズする時に歌を歌って、その歌を気に入ってもらえないと、女性から返事がもらえないそうです。

白河さん それって本当に鳥みたい。嗅覚で好き嫌いを判断するのもありますが、聴覚から入る情報も重要ですね。声がいい男性は有利?

菊水先生 そうですね。大事だと思います。鳥は選ばれる手段として、音声を使っているだけではないんですよ。鳥の種類によっては、雌は雄の歌を聞いて歌い返すだけで排卵してしまうんです。サンディエゴ動物園では、ヒョウの交配でこれを応用しています。雌に雄が発情期に出す声を聞かせると、人工受精がうまくいくそうです。雄らしさが伝わって、雌動物としては受け入れる準備が始まり、「チャンスは今!」と全身でビビッと感じるのでしょう。

白河さん 動物の行動を探ることで、人間社会にも研究の恩恵が応用できそうですね。今の話は生殖医療に関係しそうです。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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菊水健史
麻布大学 獣医学部伴侶動物学研究室 教授

1970年、鹿児島県生まれ。東京大学獣医学科卒業。獣医学博士。三共株式会社(現第一三共株式会社)神経科学研究所研究員、東京大学農学生命科学研究科(動物行動学研究室)助手を経て、2007年より麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室准教授、09年より同教授。専門は行動神経科学。同研究室では、母と子の絆と発達との関係、母子間・雄雌間のコミュニケーションの解析、犬の社会行動の3つを主なテーマに研究を行っている。最新著書に『いきもの散歩道—動物行動学からみた生物の世界—』(文永堂出版)がある。