白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは、東京大学教養学部付属教養教育高度化機構で教鞭をとる坂口菊恵さん。著書『ナンパを科学する』では、さまざまな科学的データを用いて、進化心理学の領域からナンパや配偶行動を検証して話題になりました。この対談でも、男と女の感じ方の違いや配偶者獲得の戦略について、たっぷりとお話していただきます。

第4回 婚姻システムの意味とは?

「お父さんが稼いで、お母さんが子育てして、子どもが二人という家庭が当たり前」という家族形態はスタンダードではない。家族の形態はもっと多様であっていい。そのためには、男性も女性も力を発揮できるように、雇用形態や労働形態を変えていくべきと坂口さんは訴える。

白河さん 今、婚活している人には、恋愛と結婚は別と言い切れる人は少なくて、長期戦略か、短期戦略かで選ぶ相手が違うことを意識していないと思いますね。

坂口先生 自分が一番重視するところはどこかわからないと相手選びは難しいですね。自分も相手も、すべて兼ね備えている人はいないわけですから、どこを差し引きするか、どのへんで妥協するかを考えないと。動物の配偶戦略では、雄も雌も「今の状況ではベストだ」と妥協して相手を決めます。そうしないと配偶して子孫を残していけないので。その時に、相手を何個体見たら決めるとか、どこにウエイトを置くとか、サーチのアルゴリズムが存在しているんです。

白河さん そのアルゴリズムを人間は持っていないのかもしれないですね。

坂口先生 現代社会では、人間一人ひとりの命や人生の価値が高くなっています。そうするとそう簡単に、性行動しました、生まれました、生き残ったやつだけ育てますというわけにはいきません。当然、一人の女性が産む子どもの数は少なくなってくるし、子どもに高等教育を受けさせたいから、自分も相手も収入が高くなきゃいけないとなる。そうなると、高齢化とセットで少子化がくる。性行動をしたくてガツガツしているような時期に、子どもを作っていられなくなりますよね。

白河さん ある程度、資産を形成してからということになりますよね。

坂口先生 若い人たちはセックスがしたいだけ。パートナーと一緒に子育てしたいとも思わないので、子どもが生まれてもすぐ離婚したりする。一方、両親ともに成熟して、長く一緒にいたい、子どもも育てたいという年代になると、お互いに性的な魅力は下がっているし、そもそもパートナーも見つからないかもしれない。いろいろな段階でトレードオフがあるので、自分はどちらにウエイトを置くかはっきりさせないと。

白河さん それはもう個人差ですね。まさに今、人それぞれの選択をしなきゃいけない世の中なのに、みんなまだそれに慣れていない。いざ「結婚するもしないも自由、産むも産まないも自由ですよ」と言われると、かえってみんな選択に迷っている状況です。

坂口先生 だから何を求めるかなんですね。一緒に住むパートナーを求めるなら、50歳でも80歳でも探せます。相手は異性でなくても、同性でもいいし、ペットでもよかったり。

白河さん 女性は生む年齢に限界があるので、より戦略的にならないといけないと思っています。

坂口先生 相手にアプローチされるのを待っていてはだめですね。自分にも選択権があることを自覚しないと。動物行動学では、一般的なセオリーとしては雌が選択するわけですし。

白河さん そうですね、女性には選択権があるんですものね。いい男性を求めて永遠にさまようのではなくて、「今の時期の目的」は子どもを持つことだったら、このへんで配偶者をリサーチするのはやめて、ここからは選択に入ろうとか、ある程度自覚的になっていかないと。ところで男性はどうしていけばいいのでしょう。男性の方が行き当たりばったりなところがありますけど。

坂口先生 行き当たりばったりの方が子どもを残すチャンスが増えるからです。

白河さん でも現代社会は乱婚ではないので、男の人があちこちに子どもを作って、シングルマザーが増えたら大変なことになります。

坂口先生 本当にモテる男性に聞くと、女性の方から寄ってくるらしいですね。男性にとっては一夫多妻や乱婚がいいように見えますが、そうなると実は、男性の間での不平等が大きくなるんですね。あぶれる男性もいっぱい出ます。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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坂口菊恵
東京大学 教養学部付属教養教育高度化機構 特任助教

1973年、北海道生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。日本学術振興会特別研究員。上京後、数年間のフリーター生活を経て東京大学に入学し、進化心理学を学ぶ。専修大学、早稲田大学、東京女子大学の非常勤講師を経て、2010年より現職。09年、ヒトの恋愛・性行動にまつわる疑問を進化心理学の視点から検討した著書『ナンパを科学する——ヒトのふたつの性戦略』(東京書籍)を発表して注目を集める。
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