白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは、東京大学教養学部付属教養教育高度化機構で教鞭をとる坂口菊恵さん。著書『ナンパを科学する』では、さまざまな科学的データを用いて、進化心理学の領域からナンパや配偶行動を検証して話題になりました。この対談でも、男と女の感じ方の違いや配偶者獲得の戦略について、たっぷりとお話していただきます。

第2回 ナンパされやすい人、されにくい人

女性にスキがあるから、ナンパされたり、性的な嫌がらせを受けたりする――そう言われるのが悔しくて、ナンパの研究を始めたという坂口さん。ナンパを警戒して服装や態度に気をつけていても、ナンパされる女性はされる。それはなぜかを解き明かしていく。

白河さん ナンパされやすい人や性的な嫌がらせに遭いやすい女性は、本人にスキがあるからだと言われますが、逆にそういった経験があるから服装などに気をつけているそうですね。でもやっぱり予期せぬアプローチに遇ってしまう。結局、ナンパされやすい人とされにくい人の違いはどこにあるんでしょう。

坂口先生 身体的魅力や服装だけではナンパされやすさの違いは説明できません。見た目も関係あるかもしれませんが、私の行った調査では、同じくらいの年齢で同じくらいの見た目の人でも、よく声かけられる人と、そうでない人とかなりきれいに分かれました。

白河さん そうなると、何か行動が関係しているのでしょうか。

坂口先生 女性の性格特性と関連がありますね。ナンパする男性は、ものすごく急いでいる人、ものすごく暗い人、周囲の声が聞こえそうにない人には声をかけないはずです。道を聞いたら反応してくれそう、正面に回り込んだら目を合わせてくれそうなど、コミュニケーションが成立しそうな人を選んでいると思います。つまり、周囲の期待に合わせてしぐさや感情表出をよく調節する傾向の強い女性は、ナンパによく遭う傾向があるということです。そういう人は男女にかかわらず性的にも開放的であることが多く、外交的です。

白河さん ひとことで言うと、とっつきやすい人ですね。

坂口先生 ナンパする側はじろじろと長時間見ているわけではなく、短時間のうちに、外交的で人づき合いのよさそうな感じというのを見分けるようです。逆にいうと、それをスキと言うのかもしれませんが。

白河さん ナンパされることは、女性にとっては得なことですか、損なことですか?

坂口先生 どういう状況でアプローチされるかによります。男女がお互いにコミュニケーションを求めている場所で声をかけられるのと、会社の行き帰りで道を歩いている時に声をかけられた場合では、感じ方は異なるでしょう。予期せぬ時と場所で、いきなりアプローチされることに対して、多くの人はかなり不快に感じています。

白河さん ナンパされた経験のない人間からすると、モテてうらやましいと思ってしまいますが。

坂口先生 もしかしたら相手は人殺しかもしれませんよ。そもそもナンパされるということは、知らない男性から性的な対象として見られていることを意味します。男性は、「銀行はどこですか?」なんて、女性に警戒心を抱かせないようにアプローチしてきますが、本当の関心は性的なことにあるわけです。大学のキャンパスで、女子学生に「あなたを見て魅力的だと思いました」と声をかけ、「今日食事に行きませんか」「家に来ませんか」「一緒にベッドに行きませんか」と3つの質問をした実験があります。「食事」にOKする女性はいましたが、あとの2つの質問はほとんどの女性が拒否。「頭おかしいんじゃないの?」という反応を示しました。

白河さん そりゃそうですよ。

坂口先生 ところが、同じ質問を男子学生にしたところ、それを好ましく思う人が多かったんです。男性は女性にナンパされると、自分が知らない女性から性的な関心を持たれていることを好ましく思う場合が多いようです。

白河さん 男性は嬉しいんだ!

坂口先生 嬉しいんです。となると、男性には、女性はいきなり声をかけられたら不快に感じるということがわかりにくいですよね。もちろん中には、声をかけられて嬉しい女性もいるでしょうが、それは少数派です。

白河さん そうか、男性は「その日の夜にいいことがあればいいな」と思って声をかけているわけですね。

坂口先生 大部分の男性はそうです。中には婚活やっている人もいるみたいですが(笑)、それはものすごい少数でしょう。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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坂口菊恵
東京大学 教養学部付属教養教育高度化機構 特任助教

1973年、北海道生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。日本学術振興会特別研究員。上京後、数年間のフリーター生活を経て東京大学に入学し、進化心理学を学ぶ。専修大学、早稲田大学、東京女子大学の非常勤講師を経て、2010年より現職。09年、ヒトの恋愛・性行動にまつわる疑問を進化心理学の視点から検討した著書『ナンパを科学する——ヒトのふたつの性戦略』(東京書籍)を発表して注目を集める。
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