白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは、東京大学教養学部付属教養教育高度化機構で教鞭をとる坂口菊恵さん。著書『ナンパを科学する』では、さまざまな科学的データを用いて、進化心理学の領域からナンパや配偶行動を検証して話題になりました。この対談でも、男と女の感じ方の違いや配偶者獲得の戦略について、たっぷりとお話していただきます。

第1回 男と女の感じ方はこんなに違う

ナンパをされたら、男性は「嬉しい」と感じ、女性は「いきなり声をかけられて不快」と感じる――ナンパから営業スマイルまで、男女の受け取り方はまったく違うと坂口さんは指摘する。この差はどこからくるのか、そして異性のサインはどう読めばいいのだろう。

白河さん 坂口先生の『ナンパを科学する』は話題になりましたね。私がこの本を読んでいるのを見て、「それ何の本?」と興味津々で聞いてくる男性も多かったですね。

坂口先生 タイトルに「ナンパ」とついているので興味を持つのでしょう。でも内容は、「なぜ一方が望まないのにもう片方が性的なアプローチをしようと望むようなことが起こるのか」「そうした時になぜ受け手は不快に思うのか」「アプローチをする側は何を基準に相手を選択しているのか」といった疑問に対する学術的な検討です。心理学を学んでいない人には難しいと言われます。

白河さん この本では、相手からのアプローチに対して、男と女の感じ方には違いがあることを明らかにしています。具体的にはどのような違いなのでしょうか。

坂口先生 大学生を対象に行った実験では、同じコミュニケーションを男子学生と女子学生に見せた場合、男性のほうが「女性がセクシーに振る舞っている」と解釈しやすいことがわかりました。女性側にはそういう意図がなかったり、女性から見ると、セクシーには見えない状況でも、男性はそういう風にとらえる傾向があります。

白河さん たしかに女性の営業スマイルを「自分に気があるのか」と都合よくとらえる男性はいますね。

坂口先生 アメリカの大手のスーパーで、店員に「お客さんに微笑みなさい」と指導したら、それを誤解して求愛してくる男性客が増えて、スーパーが女性店員に訴えられたという話があります。

白河さん お見合いの席で、男性は「ものすごく楽しい時間を過ごした、今後もおつきあいさせてください」と感じ、女性のほうは「ものすごく苦痛な時間を過ごした、一生懸命に話題を振って疲れてしまったので、二度と会いたくありません」と。同じ時間を過ごして、この解釈の差はなんだという例はありますね。なぜ男性の方が都合のいい解釈をしがちなのでしょう。

坂口先生 機会があれば、つまり性行動や繁殖の機会があれば突っ込んで行くという性質を持っているからでしょう。同じ“親しげな行動”でも、女性より男性のほうが性的な意図を付与しやすいのです。

白河さん つまり「おれに気があるんだ」と解釈するということ?

坂口先生 自分に対してだけではなく、「どうもこの女性は、話し相手の男性に対してすごくセクシーに振る舞っている」という風に考えるようです。

白河さん 女性はそのことに鈍感だったりするわけですか。

坂口先生 そうです。「男性に対してこういう風に振る舞ったら、性的に解釈されている」と気づきにくいといえます。特に若い女性や経験値の低い女性は、例えば「男の子の家について行ったら危ない」とか、なかなかわからないようです。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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坂口菊恵
東京大学 教養学部付属教養教育高度化機構 特任助教

1973年、北海道生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。日本学術振興会特別研究員。上京後、数年間のフリーター生活を経て東京大学に入学し、進化心理学を学ぶ。専修大学、早稲田大学、東京女子大学の非常勤講師を経て、2010年より現職。09年、ヒトの恋愛・性行動にまつわる疑問を進化心理学の視点から検討した著書『ナンパを科学する——ヒトのふたつの性戦略』(東京書籍)を発表して注目を集める。
http://orange.zero.jp/ksakaguti.bird/