白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは総合研究大学院大学教授の長谷川眞理子さん。性にまつわる様々な問題は、先生が専門とする生物学の大きなテーマ。生物界に見られる雄と雌の関係から、人間の男と女の関係を考察。負け犬や草食男子、浮気の話、人間の子育ての話と、なるほど納得の話を披露してくださいました。

第4回 これからの恋愛・結婚は

白河さん 2009年のデータで、フランスでは結婚3件に対して事実婚(結婚と同棲の間くらいの制度)は約2件。婚外子率は50%以上なので、同棲で子どもを持つ人がすごく多いことになります。父親に認知されない子どもは3%しかいないから、みんなカップルで子育てしています。

長谷川先生 そういう風に戦後60年でヨーロッパは結婚制度が変わったのに、日本は相変わらず婚外子は2.0%にとどまっています。これだけ社会が変わっているのに、同棲も増えていない。どうしてでしょう。

白河さん 婚外子=シングルマザー=孤独な子育てという負のイメージがあるからでは。婚外子だけどカップルで子育てという形態は本当に増えませんね。カップルの同棲率も2%。これは、シングルの約7割が親にパラサイトしていることに関係していると思います。

長谷川先生 やはり家が関係しているのでしょうか。

白河さん 親元にいる期間が長過ぎるのがいけない。「離家」のタイミングが遅い社会は、少子化が進むという研究があります。家を出れば一人では食べられないから、同棲してカップルになったほうがラク。でも親元にいたほうがいい生活ができるので、みんな家を出ていかない。それでいて恋愛のいいとこどりをしている。

長谷川先生 自立していないのかな。

白河さん 虫がつく隙もないんです。それに同棲したはいいけれど、遊ばれて終わりという懐疑心もあります。同棲したほうが結婚が早くなると言うと、だらだらして結局、結婚できないと反論する人がかならずいます。

長谷川先生 わかった。日本人は他者を信用しないんですよ。北海道大学大学院の山岸俊男教授の研究によると、日本人とアメリカ人を比較すると、日本人のほうが他者一般に対する信頼が低いというんです。日本人が信用するのは地縁血縁がある人。同棲相手は他者一般だから信用できないけれど、結婚すれば身内になるから信用できる、となるのでは。

白河さん 日本のカップルの同棲率はたった2%ですからね。

長谷川先生 他者一般に対する信頼性が高い人は、人を見る目があって、ぱっと見ただけでいい人か悪い人か判断ができる。ということは場数を踏んでいるということ。たまに裏切られるけど、めげずに何度も出かける。アメリカは人を見る目を養わないとやっていけない社会だから、みんな場数を踏んでいる。日本人はそういう訓練をしていないから、一般に人が悪いだろうと判断するのでしょう。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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長谷川眞理子
総合研究大学院大学教授

1976年東京大学理学部生物学科卒業。同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。早稲田大学政治経済学部教授を経て、現職。ニホンザル、チンパンジー、野生のヒツジ、クジャクなど多くの動物を観察した成果を投入し、進化生物学、行動生物学の視点から複雑な人間の研究に取り組む。著書に『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店)、『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(集英社新書)、『オスとメス=性の不思議』(講談社現代新書)など。