白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは総合研究大学院大学教授の長谷川眞理子さん。性にまつわる様々な問題は、先生が専門とする生物学の大きなテーマ。生物界に見られる雄と雌の関係から、人間の男と女の関係を考察。負け犬や草食男子、浮気の話、人間の子育ての話と、なるほど納得の話を披露してくださいました。

第3回 モテる雄の謎

モテる雄は、ガンガン稼いで、ケンカに強くて、という時代は過ぎ去りつつあるのかも。強い男性にひかれつつも、女性が求めるのは子育てに協力的な優しい男性。鳥の世界でも、ケンカに強くて縄張りが広いだけが、雌に選ばれる条件ではないらしい。

白河さん 先生が『クジャクの雄はなぜ美しい?』にも書かれたように、鳥は雄が一生懸命に家を作ったり、ディスプレイしてみたりと頑張って、雌が誰がいいかを選ぶんですね。でも今の日本では、婚活の様子を見ていても、優れた雄に複数の雌が群がる状況になっています。

長谷川先生 でも一夫多妻にはなっていないでしょう。

白河さん なってはいませんが、最近は再婚率もいいので、モテる男性は何度か再婚して、時間差一夫多妻のようになっていることもあります。でも選ぶのは女性だったはずでは?

長谷川先生 それは違うんです。動物の同性間の競争には、雌を獲得するための雄・雄競争と、雄を獲得するための雌・雌競争がありますが、本質的には雄・雄競争です。なぜなら生産に時間がかかる卵子の方が数が少なく、生産に時間がかからない精子は余るからです。ほ乳類は、雄・雄競争の勝者が、がばっと雌を取ります。

白河さん 負けた方の雄が好きでも、そちらに行くことは許されないのですか。

長谷川先生 アザラシなどは、負けた雄の所に行こうとする雌を噛んで阻止します。それで噛み殺される雌もいます。ところが鳥はまったく逆で、雄が一生懸命に「来てください!」とアピールします。選ぶのは雌です。いずれにしても雄・雄競争で、雌が蹴り合ったりする例はほんの一部です。

白河さん 人間もほ乳類だから、本質的には雄・雄競争ですか。

長谷川先生 ところが人間はそう簡単ではないんです。人間の婚姻の歴史を見ると、結婚する当人同士が当人の好みで結婚していたことはありません。どの子とどの子を一緒にしたら、社会全体が栄えていくかを親の世代が決めていた。自由に恋愛感情で選べるようになったのはつい最近のことです。

白河さん 少し前の日本だってそうですよね。

長谷川先生 親は条件のいい男性に嫁がせようとするので、選ばれた男性が一夫多妻的になることはあります。例えば牧畜民の場合は、たくさん羊を持っている男性のところに、娘の親が「結婚してくれ」と申し込みます。これもいわば雄・雄競争ですから、選ばれた雄に雌が群がる状況は起こります。

白河さん 人間の男性は、「力持ち」とかいう条件で選ばれるわけではないですよね。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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長谷川眞理子
総合研究大学院大学教授

1976年東京大学理学部生物学科卒業。同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。早稲田大学政治経済学部教授を経て、現職。ニホンザル、チンパンジー、野生のヒツジ、クジャクなど多くの動物を観察した成果を投入し、進化生物学、行動生物学の視点から複雑な人間の研究に取り組む。著書に『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店)、『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(集英社新書)、『オスとメス=性の不思議』(講談社現代新書)など。