白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは総合研究大学院大学教授の長谷川眞理子さん。性にまつわる様々な問題は、先生が専門とする生物学の大きなテーマ。生物界に見られる雄と雌の関係から、人間の男と女の関係を考察。負け犬や草食男子、浮気の話、人間の子育ての話と、なるほど納得の話を披露してくださいました。

第2回 男と女、二つの性がある理由

動物には、複雑な脳を持った人間は、それぞれが自分の基準で相手を選ぼうとするため、マッチングはそううまくはいかない。結婚に対するプレッシャーもなくなり、相手選びはますます困難に。母親になるプレッシャーからも解放された女性は自己投資に邁進。その男性版が草食男子ではないかという。

白河さん 鳥は一夫一婦制が多いけれど、実はたくさん浮気をしていることが判明したという話を聞きました。オシドリ夫婦の美談が崩れたという(笑)。

長谷川先生 鳥は9000種類あるうちの95%が一夫一婦制つがいです。ところが最近になって、卵やヒナのDNAを調べられるようになり、つがい以外の雄の子が混じっていることがわかりました。100%そのカップルの子だったのは、白鳥とペンギンだけ。68%がよその雄の子だったという例もあり、何をやってるんだという感じです(笑)。

白河さん 遺伝子のバリエーションを増やしたいとか、優秀な雄の子がほしいとか、理由があるのでは。

長谷川先生 そうかもしれませんが、まだ理由は解明されていません。

白河さん 鳥は本能的に、いい雄、いい雌を見分けて、NO1雄とNO1雌の順に、きれいにつがいになっていくそうですね。

長谷川先生 生存力が強い雄から弱い雄までバラつきがあり、平均的な雄が一番多いという正規分布をしているからだと考えられます。雌にも卵の生産力にバラつきがあります。鳥の場合は、なんらかの理由で自分の地位がわかるようです。さらに、雄の免疫力の強さが羽の輝きとかに現れるなど、何らかのシグナルを出している。そのシグナルを見て、雄と雌が双方で選び合うので、トップがトップを選び、2番目が2番目を選ぶことになるのです。

白河さん 人間の場合は、そうはいきませんよね。さまざまな理由があって、つがいになる機会を持たない人が出てきてしまう。

長谷川先生 人間は複雑な脳を持っていて、いろいろ複雑なことを考えるから、何がベストかは一次元では決まらない。だから人間の雄は角を生やしていないし、クジャクの羽みたいなものを広げていないんですよ。

白河さん たしかに、そう簡単な話ではありませんね。

長谷川先生 クジャクだと「ケオンケオン」という鳴き声が、すべての雌にとって雄を選ぶ指標になります。ところが人間の場合は、雄側も雌側も、何が一番いいかはそれぞれ違う。集団全体に通用する、共有されている尺度というのがないのです。





写真

白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



写真

長谷川眞理子
総合研究大学院大学教授

1976年東京大学理学部生物学科卒業。同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。早稲田大学政治経済学部教授を経て、現職。ニホンザル、チンパンジー、野生のヒツジ、クジャクなど多くの動物を観察した成果を投入し、進化生物学、行動生物学の視点から複雑な人間の研究に取り組む。著書に『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店)、『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(集英社新書)、『オスとメス=性の不思議』(講談社現代新書)など。