白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

今回のゲストは総合研究大学院大学教授の長谷川眞理子さん。性にまつわる様々な問題は、先生が専門とする生物学の大きなテーマ。生物界に見られる雄と雌の関係から、人間の男と女の関係を考察。負け犬や草食男子、浮気の話、人間の子育ての話と、なるほど納得の話を披露してくださいました。

第1回 人間にだけ、なぜ負け犬が生まれるのか

白河さん では、おばあさんに役割りがあるように、子どもを産まない女性にも何か役割りがあるのでしょうか。

長谷川先生 ありますよ、ありますよ。

白河さん 子育てには「独身の無責任なおじさん」のように、親とは違う価値観を持つ人が関わるといいと読んだことがあります。独身の女性、子どものいない女性も、友だちの子どものために何かできるのではないかと思っていますが、向こうは余計なお世話と思っているかも(笑)。

長谷川先生 動物は勝手に食べて、親が子どもを生産します。でも人間は、狩猟採集社会であっても、手でもいで食べているわけではありません。道具を作り、動物を狩っています。この「生産の流れ」がどうなるかによって、出産できるかどうかが決まります。

白河さん 労働によって食糧を生産しているわけですね。。

長谷川先生 生産活動は文化です。「情報」と「物質」が、代々伝えられて初めて生産できる。生産ができて初めて子どもが産まれる。この情報文化と物質文化を伝えるのが、社会のしくみ。そこには、子どもを産んでいない人もたくさん関わっています。社会が複雑になるほど生産の方法も複雑になるから、一人の子どもを産むためには、生産に関わる人間が増えなければなりません。結局は、自分の子ども以外の子どもも育てていることになります。

白河さん 誰もがコストを負担しているのですね。

長谷川先生 生産が複雑になって情報文化、物質文化の伝達が大変になればなるほど、一人の子どもにかかるエネルギーコストが高くなり、誰もが産むわけにはいかなくなります。

白河さん 子どもを産まない女性も、子育てのコストを負担するという形で関わっているのですね。



「第2回 男と女、二つの性がある理由」へつづく

今週の気になる「お言葉」
みんなの助力を得なければできない子育てなのです。人間は「共同繁殖」する動物です。
今の社会では、一人の子どもにかかるエネルギーコストが高くなるので、誰もが産むわけにはいかなくなる。





写真

白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



写真

長谷川眞理子
総合研究大学院大学教授

1976年東京大学理学部生物学科卒業。同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。早稲田大学政治経済学部教授を経て、現職。ニホンザル、チンパンジー、野生のヒツジ、クジャクなど多くの動物を観察した成果を投入し、進化生物学、行動生物学の視点から複雑な人間の研究に取り組む。著書に『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店)、『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(集英社新書)、『オスとメス=性の不思議』(講談社現代新書)など。