白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

ゲストは宗教人類学者の植島啓司さん。長年のフィールドワーク、また競馬やカジノ遍歴を通じて培った「不確実な時代を生き抜く知恵」を学びます。恋愛・結婚もまた「賭け」と考えるなら、勝つ確率はどのくらいあるのか? 文化人類学の視点で、草食男子が登場した意味についても語っていただきました。

第3回 草食男子の登場、その意味は

ギラギラした男性より優しい男の人が好きー女性のメッセージを受けた男性たちは草食化、さらに乙女化しつつある。中性化は滅びへの道。求められるのは、男女両方の要素を持ってゴージャスに生きること。

白河さん 最近、女の子と一晩部屋に泊まったけれど、何もしなかったと言う話を若い男の子から聞きました。どうして何もなかったか尋ねたら、「大事な僕は、一番好きな人のためにとっておきたいと」言う。男の子が「乙女化」しているんです。人類学的に見ると、草食男子の登場はどんな意味を持つと思いますか?

植島先生 草食男子はどちらかというと日本特有の現象です。その背景には、戦わない社会があると思います。65年間も戦争していない社会は、世界中でもあまり例がない。平和ボケと言われますが、戦わない社会にいたら、人と争うことを避けるようになるのは当然だと思いますね。

白河さん なるほど、戦わない社会から出てきた産物が草食系男子ですね。

植島先生 ええ。全世界的にいえるのは、男女が歩み寄ってきたこと。男女の役割分担がある程度共通化してきたこと、女性が男性化して、恋愛でも自分から好きだと言えるようになっていることはあると思います。

白河さん 最近は、女性が稼いで、男性はあまり稼がないで家事をやるカップルも増えています。

植島先生 経済的な裏付けもあるでしょうが、役割分担自体が変わってきているのではないですか。これは世界的に言えることだと思います。でも草食男子は、世界的にいえることではありません。

白河さん 役割分担が変わってきたといっても、女性は昔からたくさん獲物を穫ってきてくれるような男性を求めている。そこは変わっていないように思います。ただ、今それを言っていると、相手が見つからなくなる。たくさん獲物をとってくる男性は少数しかいないから、つきつめれば、一夫多妻がいいということになります。

植島先生 本人には当たり前のように思えますが、一夫一婦制は定説ではありません。今も一夫一婦制を守っているのは、文化圏でいうと20%未満。一夫一婦制はむしろ少数派です。中国が1950年代に一夫一婦制を採用して、だいぶ状況は変わりましたが、イスラム、ヒンドゥーをはじめ、80%以上の文化圏が基本的には一夫多妻制です。

白河さん 一夫一婦制でも、建前と本音は違いますよね。

植島先生 ただ僕は、奥さんが3人いることは、本当は男にとって不幸な状態だと思います(笑)。でも、一夫一婦制で奥さんがいて、さらに好きな女性が他に持てれば、男にとってはパラダイス。それこそ大きな違いですね。

白河さん 草食系、肉食系と分けるのはどうかと思いますが、結局のところ女性は、肉食系の男性が好きだと思います。

植島先生 そうでしょうね。肉食系の男性のほうが、女性はラクですから。今の女性から見ても、明治、大正、昭和初期の男性のほうが魅力的に見えますよね。亭主関白はよくないけれど、男としての存在のあり方は魅力的ではないですか。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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植島啓司
宗教人類学者

1947年東京生まれ。東大大学院(宗教人類学専攻)博士課程修了。NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授など歴任。1970年代から現在まで、世界各地で宗教人類学調査を続けている。競馬評論家としても知られ、また世界各地のカジノも経験。著書に『生きるチカラ』『賭ける魂』『男が女になる病気』『熊野 神と仏』など多数。
ブログ:http://k-ueshima.cocolog-nifty.com/blog/