白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

ゲストは宗教人類学者の植島啓司さん。長年のフィールドワーク、また競馬やカジノ遍歴を通じて培った「不確実な時代を生き抜く知恵」を学びます。恋愛・結婚もまた「賭け」と考えるなら、勝つ確率はどのくらいあるのか? 文化人類学の視点で、草食男子が登場した意味についても語っていただきました。

第2回 恋愛の技術

恋愛のカギは会話。婚活でも自分をアピールしたほうが勝ちに思える。しかし実際は、「私」の話を投げ続けるピッチャーより、「あなた」の話を受け止めるキャッチャーのほうが相手の心を射止める確率が高いという。

白河さん 植島さんは宗教人類学の調査で各国を旅していらっしゃいますが、恋愛の始まり方も国や文化によって違いがありますか?

植島先生 好きになり方は人それぞれですが、世界中、どこの国を見ても、だいたい女性から最初に「好き」という合図を出しますね。言葉には出さないけど、視線や仕草とか、微妙な合図で「好意を持っている」と。動物もそうです。求愛行動ですね。

白河さん つまり選ぶのは女性ということ?

植島先生 粉をかけるのは女性(笑)。それを敏感に察知する男性はいい相手と結ばれる可能性が高いのでしょうが、鈍感な男性もいますからね。

白河さん 最近、鈍感な人が多いんです。男女共にですが、特に男性に鈍感な人が多くて。経験で磨かれていくとは思うのですが。

植島先生 経験もあれば、生まれつきのセンスということもありますね。でも、もともと男性は「この人を気に入った」というとき、言葉でしか表現できないようなもろさがあります。だから、かえってもごもごしてしまう。

白河さん 女性から「合図を出しているのに男性が答えてくれない」という訴えも多いですね。女性は、ひと昔前に『ルールズ - 理想の男性と結婚するための35の法則』(原本は”The Rules” by Ellen Fein & Sherrie Shneider)という一斉を風靡した恋愛本があって、みんなそれを信じているんです。これはアメリカの恋愛本で、言葉に出さない求愛行動をして、気をもたせて誘い込むような努力をしなさい、絶対に女性から誘ってはいけないと書いてあります。例えば「木曜日に電話が来たら断りなさい」と。「突然誘われても、週末が空いているような女じゃないのよ」と、高く見せることしか書いてない。

植島先生 大変だなあ。

白河さん 男性からはよく「うまく女性と会話できません」という質問も来ます。

植島先生 話下手なのであれば、相手の話を受ければいいのではないですか。恋愛はピッチャーよりキャッチャーのほうが勝つんです。

白河さん 「好きだ、好きだ」と言葉を投げてくるのがピッチャーですよね。もてる技術、恋愛の指南書では、有能なピッチャーであれと言われますが、むしろ有能なキャッチャーであるほうがいいわけですね。

植島先生 相手の話題についていけなくても、ただ受けてあげればいいんです。だいたい「私は、私は」という人に、ろくな人はいません。アメリカの調査ですが、電話の会話で最も嫌われる単語は「私」だったそうです。相手が「私」という言葉を発した瞬間に、ちょっと落胆する、相手の話が始まったなと思ってテンションが落ちるというのです。

白河さん あんなにミーイズムの国でも。

植島先生 逆に喜ばれるのは「あなたは」という言葉や、相手の名前を呼んであげること。親しい仲でも会話に時々「~ちゃん」と入れてあげるとすごく効果があります。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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植島啓司
宗教人類学者

1947年東京生まれ。東大大学院(宗教人類学専攻)博士課程修了。NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授など歴任。1970年代から現在まで、世界各地で宗教人類学調査を続けている。競馬評論家としても知られ、また世界各地のカジノも経験。著書に『生きるチカラ』『賭ける魂』『男が女になる病気』『熊野 神と仏』など多数。
ブログ:http://k-ueshima.cocolog-nifty.com/blog/