白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

ゲストは宗教人類学者の植島啓司さん。長年のフィールドワーク、また競馬やカジノ遍歴を通じて培った「不確実な時代を生き抜く知恵」を学びます。恋愛・結婚もまた「賭け」と考えるなら、勝つ確率はどのくらいあるのか? 文化人類学の視点で、草食男子が登場した意味についても語っていただきました。

第1回 恋愛・結婚における「賭け」の確率論

白河さん まさに「ゲゲゲの女房」の世界ですね。20代の女の子たちが、すごくゲゲゲの夫婦に憧れているようです。

植島先生 それはそうでしょう。最後に成功することがわかっているわけですから(笑)。

白河さん お金持ちの奥さんを見てると、ものすごい眼力があって、「この人は今無一文だけど、いずれ成功すると思って結婚した」という人はいないんです。ある意味「だめんず」なのかも。「会った時に無職だった」「事業を始めたばかりで借金だらけだった」とか、そういう人が多かった。取材したケースには「二人で頑張って成功して、今は幸せになりました」というオチがついているわけですが、そうならない人もたくさんいるはず。その確率は50%50%だと思います。

植島先生 さすがに「30になってもロックバンドやってます」という「だめんず」だと厳しい気はします(笑)。ただ、その男性と結婚しても不幸だとは思いませんね。正社員になっても未来が見えない世の中になったのは、僕はいいことだと思っています。今までは、いい大学を出て、いい会社に入ったら、もうそこからは一直線。外れたら最後、たいへん苦労するという社会でした。それが今はシャッフルされて、「俺は一生絵を描いていく」という人も市民権を得たというか、ある意味で平等化したのかなと。

白河さん 同じ年収でも、好きでもないことをやってストレスだらけの人より、好きなことやっている人のほうがいいと。ただ、世の中がそんな風に変わってきているのに、女性の考える結婚の形は変わらない気がします。「いい大学を出て、いい会社に入った人と結ばれて、一生安泰になる」夢を捨てられない女性がとても多い。

植島先生 そうですね。統計を出してみれば、いい大学に入って、そこで知り合った男の子は、そこそこの学力があるわけだから成功する確率は高いという結果が出るかもしれません。でも実際には、なかなかそううまくはいかないでしょう。

白河さん 今のような不確実な時代に、男性の成功の確率なんてわからないですよね。

植島先生 例えば、ポール・ニューマンやマーロン・ブランドは、子どもがみなクスリ中毒で死んでしまった。成功したって、幸せになるとは限りません。それに、本当に成功かどうか、評価は死後かもしれない。勝敗はつかないんです。



「第2回 恋愛の技術」へつづく

今週の気になる「お言葉」
恋愛は何かピカッとくるものが一つあれば始まりますが、結婚には寛容さ、相手に自由を与えてくれるおおらかさが必要。
「一つの長所だけで好きになったらいい」と書きましたが、一つの短所だけで嫌いになる人は、損な生き方をしていると思います。
幸福という言葉は「幸は偶然手に入れたもの、福は自分の努力によって築いたもの」なのです。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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植島啓司
宗教人類学者

1947年東京生まれ。東大大学院(宗教人類学専攻)博士課程修了。NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授など歴任。1970年代から現在まで、世界各地で宗教人類学調査を続けている。競馬評論家としても知られ、また世界各地のカジノも経験。著書に『生きるチカラ』『賭ける魂』『男が女になる病気』『熊野 神と仏』など多数。
ブログ:http://k-ueshima.cocolog-nifty.com/blog/