白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

ゲストは宗教人類学者の植島啓司さん。長年のフィールドワーク、また競馬やカジノ遍歴を通じて培った「不確実な時代を生き抜く知恵」を学びます。恋愛・結婚もまた「賭け」と考えるなら、勝つ確率はどのくらいあるのか? 文化人類学の視点で、草食男子が登場した意味についても語っていただきました。

第1回 恋愛・結婚における「賭け」の確率論

植島先生 相手が少々臭かったり(笑)してもいいじゃないですか。いや、ダメかな(笑)。もし僕が女だったら、男に求めるのは「寛容さ」だけですね。もし結婚がうまくいかなくても、相手が寛容な男性であれば、他の楽しみを見つけることができる。ダメ夫の上に束縛する男だったら、逃げ場がないじゃないですか。

白河さん それはつらそうですねえ。

植島先生 恋愛は何かピカッとくるものが一つあれば始まりますが、結婚には寛容さ、相手に自由を与えてくれるおおらかさが必要。若い頃はぼーっとしているように見えた男性が、30歳を過ぎた頃からモテ始めるのは、そういう理由もあるからだと思います。

恋愛では、20代前半くらいまでは、相手に全人格的一致を求める傾向があります。何から何まで一致できたら幸せと思っているから、恋愛が大変になる。でも視点を逆にして、何もかも一致しなくてもいいと考えれば、とても楽になります。『生きるチカラ』にも「一つの長所だけで好きになったらいい」と書きましたが、一つの短所だけで嫌いになる人は、損な生き方をしていると思います。

白河さん たしかに、一つの長所だけで人を好きになれる人は得ですね。結婚情報サービス会社の人に聞くと、相手が決まるのは「条件のいい人」「きれいな人」「若い人」ではなくて「惚れっぽい人」だそうです。常に恋愛している人は、バツイチでもかならず再婚しますし。

植島先生 すぐ惚れられる体質って大事ですね。

白河さん ところが、今は「惚れない体質」の人が多いんです。特に恋愛と結婚が近い年齢の人は、いろいろなことをシュミレーションしすぎて、なかなか惚れられない。どうしたらいいのでしょう。

植島先生 恋愛や結婚に、学歴とか年収とか条件を挙げていくとシビアなことになります。でも、お金持ちと結婚すれば絶対に幸せになれるとはいえません。普通の人と結婚して、一緒にお金持ちなった人は幸せですが。そこに大きな違いがありますね。安岡正篤が言っていますが、幸福という言葉は「幸は偶然手に入れたもの、福は自分の努力によって築いたもの」なのです。

白河さん 『セレブ妻になれる人、なれない人』を書くための取材でも、同じような結果が出ました。幸せなセレブ妻は、普通の男性と結婚して、一緒に頑張ってお金持ちになった人でした。

植島先生 経験から感じることですが、相手に共感して、一緒に努力して、一緒に積み上げていったものしか、二人の財産にならないんですね。元から持っていたものは、むしろ邪魔になることが多い。





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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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植島啓司
宗教人類学者

1947年東京生まれ。東大大学院(宗教人類学専攻)博士課程修了。NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授など歴任。1970年代から現在まで、世界各地で宗教人類学調査を続けている。競馬評論家としても知られ、また世界各地のカジノも経験。著書に『生きるチカラ』『賭ける魂』『男が女になる病気』『熊野 神と仏』など多数。
ブログ:http://k-ueshima.cocolog-nifty.com/blog/