白河桃子の恋愛サイエンスカフェ

ゲストは宗教人類学者の植島啓司さん。長年のフィールドワーク、また競馬やカジノ遍歴を通じて培った「不確実な時代を生き抜く知恵」を学びます。恋愛・結婚もまた「賭け」と考えるなら、勝つ確率はどのくらいあるのか? 文化人類学の視点で、草食男子が登場した意味についても語っていただきました。

第1回 恋愛・結婚における「賭け」の確率論

結婚も賭けと考えると、絶対に失敗したくないという心理が働く。収入や家柄で相手を選んでも、この不確実な時代、絶対に幸せになる保証はない。競馬や宝くじと同じで、まず賭けてみることで運は回り始める。

白河さん 植島さんの『賭ける魂』を読んで、「賭け」の確率についてこんなにしっかり書いた本はないと感動しました。結婚もある種の賭けだと思いますが、確率論は応用できるのでしょうか。

植島先生 結婚相手を探すときに応用できる確率論はありますよ。例えば、100枚の紙が裏返しに置いてあって、そこに1億円から1円までランダムな数字が書かれているとします。順番にめくっていって、一番大きな数を選ぶゲームをする場合、何枚目にそれが出るか。実は答えは確率論で明らかにされていて、最初から3分の1、確率計算では37%まではただ見るだけ、その後、それまでに出た数より大きな数が出たところでストップすればいい。何かを選択するとき、これが一番確率の高いやり方です。

白河さん それ以上は、いくらめくっても結果は変わらないということですか。結婚に応用すると、どうなるのでしょうか。

植島先生 10人とお見合いするとしたら、最初の3人はスルーする。そして、その3人の中で一番好印象を持った人よりも上の人が出てくるまで待つ。その人を選べばいいということになります。

白河さん なるほど。でも結婚の場合、何人の相手に会うかわからないことが問題ですね。

植島先生 その通り。3人スルーしたら取り戻せないかもしれません。それに、37%でストップするには、いったいどのくらいの相手とつきあえばいいのか。そこまで待てないだろうし、つい最初の人と結ばれてしまうケースも、いつまで待ち続けてもいい人と出会えないケースもある。結婚は人生で最も難しい賭けの一つといえますね。

白河さん なぜ確率のことをうかがったかというと、最近「失敗したくない」と臆病になっている人がとても多いからです。「結婚なんて賭けなんだから、好きなら一緒になっちゃえば」と言うと、すごく反発される。

植島先生 うじうじ迷っているようではダメです。僕らの世代は離婚したら人生終わりみたいな時代でしたが、今は3分に1組が離婚する時代でしょう。一緒になってダメなら別れて、また一緒になって、と繰り返したらいい。

白河さん まずスタートを切るべき。

植島先生 そう、どんな相手でもいいから。だいたいスタートが一番難しいんです。好きな人を選ぶとき、最初はどうしても間違えやすい。だから最初の結婚はうまくいかないものと思って、そこからスタートしなければいけない。そうすれば「別れましょう」「二人の関係をうまくやっていきましょう」……と次の選択肢が生まれます。

白河さん 私も悩んでいる人には、「今とりあえず結婚しておかないと、50歳、60歳になって、もう一回結婚できないよ」と言っています。だってその時に初婚だったら、すごくつらいじゃないですか。

植島先生 つらいですね。

白河さん 今は再婚率のほうが初婚率より高い時代。だから、まずスタートを切るべき。誰かと一緒に暮らしてみる、誰かと恋愛してみるのでもいい。いろいろシュミレーションして立ち止まるより、まず経験したほうがいいですね。




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白河桃子
ジャーナリスト&
ライター

家族社会学会会員。慶應義塾大学文学部卒業後、大手商社に入社。外資系証券会社を経てジャーナリスト、ライターとして活躍。「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」、「婦人公論」など多数の女性誌に執筆。女性の年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化などに関するインタビューがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』は19万部のヒットに。著書に『キャリモテの時代』ほか、最新著書に『セレブ妻になれる人、なれない人』がある。
ブログ:http://www.diamondblog.jp/touko_shirakawa/



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植島啓司
宗教人類学者

1947年東京生まれ。東大大学院(宗教人類学専攻)博士課程修了。NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授など歴任。1970年代から現在まで、世界各地で宗教人類学調査を続けている。競馬評論家としても知られ、また世界各地のカジノも経験。著書に『生きるチカラ』『賭ける魂』『男が女になる病気』『熊野 神と仏』など多数。
ブログ:http://k-ueshima.cocolog-nifty.com/blog/